この記事の連載
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- 【山形】アル・ケッチァーノの新店 #2
庄内の豊かな食材をあれこれ食べてほしい
料理は、昼夜共通の3コース(4,400円、7,700円、15,000円)。移転オープンから間もない8月末のメニューで、まず目を引いたのは、最大8種類のアミューズです。
「うちのコースは、もともと皿数が多いんです。庄内の豊かな食材をあれこれ食べてもらいたいと思うと、減らすほうが難しくて。だから、“ハッとさせる”“しみじみさせる”“ほのぼのさせる”といった具合に料理の表情を変え、食べ飽きない構成を考えてきました。でも、最近の若い人ってみんな細身で、食べる量自体が減ってきているでしょう。そこでお皿を小さくして “アル・ケッチァーノ メモリーズ”というアミューズとし、その後で本編の料理を出すというスタイルにしました」
弘法大師の逸話が残る外内島きゅうりを使った料理
後に続く料理のうち、特に印象深かったのは「外内島(とのじま)きゅうりのフェデリーニ」。鶴岡市外内島地区で、わずかに栽培されている外内島きゅうりは、弘法大師が出羽三山に向かう途中、このきゅうりで喉の渇きを癒したという逸話も残る在来種です。
「青唐辛子のペペロンチーノをベースに、千切りにしたきゅうりの皮を加え、角切りのきゅうりをたっぷりとのせています。味の輪郭は、キムチと同じ」と、奥田シェフ。え? キムチ? 食べてみると確かに、キムチを彷彿とさせる“からしょっぱい”味。あえてランダムに刻んだというきゅうりは、噛むごとに甘みを増し、爽やかな香味が広がります。
ストレートな美味しさを味わってもらうためのシンプルさとスピード
「心がけているのは、毎朝届く素材の鮮度を損なわないよう、シンプルに、スピーティーに調理して、お客様のテーブルに届けることです。素材の細胞が生きた状態でおいしく食べれば、自然の豊かさをストレートに感じられるし、地球に感謝する気持がわいてくる。食を育む環境や、農業にも目が向く。そのきっかけになれたら嬉しいですね」
「アル・ケッチァーノ」が成功した理由は、庄内産の食材にとことんこだわったというだけではありません。後篇では、奥田シェフのユニークな料理理論、人生哲学、未来に向けた構想についてもご紹介します。
Al che-cciano(アル・ケッチァーノ)
所在地 山形県鶴岡市遠賀原字稲荷43
電話番号 0235-26-0609
営業時間 11:30~13:30 L.O. 18:00~20:30 L.O.
定休日 月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日休)
https://alchecciano.com/
2022.09.24(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤