警察官時代も、存じ上げて拝見していましたし、出産のとき検診のたびに産婦人科の先生が『コウノドリ』を例に赤ちゃんのことを説明してくださいました。ですから、単なる漫画作品を超えた存在でした。編集部で『コウノドリ』を描いている人を見たとき感動しましたね。あ、人が描いてるんだって(笑)。

――それくらい大きな作品だったと。

 新しい道を作ったと思うんです。青年誌で産婦人科医を扱うってのも新しいし、すごいなと思っていました。大好きな作品です。

――泰さんは、お子さんがおられるんですね。

 二人います。

鈴ノ木 えー! 泰さんは二人の育児をしながら『ハコヅメ』の週刊連載をしていたんですか。バケモノだなぁ(笑)。

現場の人から寄せられる「リクエスト」

――『コウノドリ』は産科医を、『ハコヅメ』は警察官を主人公にしたいわゆる「職業モノ」の漫画ですが、実際に働いている方からどんな感想をもらいますか。

鈴ノ木 僕はあまり家から出ないので、感想をもらうことは思ったほどありません。現場の取材には行ってましたが、作品の感想というよりは「こういうこともあるんですよ」と伝えてほしいエピソードを聞くことが多かったですね。

――今、取材という話がありましたが、産科医の先生のところにはどれくらい行かれていたんですか。

鈴ノ木 いちばん行ってたときは、年に2、3回ですかね。大阪や神奈川、仙台などの子ども病院で、みなさんとても協力してくださいました。

――お話を聞くのも大事だと思いますが、場所を見るのも?

鈴ノ木 漫画にとってはそれがいちばん大事です。病院に行ったときそこの空気を感じないとリアリティをもって描けないので。泰さんとちがって僕は産婦人科医ではないので、そこはとても大切ですね。

――泰さんは、警察官の方からどんな感想をもらいますか?

 警視庁の方にも読んでもらって、グループ対談などをするお仕事などもさせていただいていて、おおむね好評だとは感じています。ただもっと切羽詰まった現実の事件のことを描いてほしいとも言われますね。でも、それを商業作品に落とし込むのは、私の腕ではまだ難しいなと思っています。

2022.09.10(土)
文=岡部敬史