――泰さんが、もともと伝えたいと思っていた警察官の実情とは、具体的にどういったものなのでしょうか。

 たとえば交通取締の反則金ですが、あの金が警察官のお小遣いになると思っている人が本当に多いんですよ。あれ、現場の人には一銭も入ってこないし、個人的にはやりたくない。でも事故防止には効果的だからやっている。そんなことが少しでも伝わったら、警察活動もやりやすくなるといつも思っていたんですね。

鈴ノ木 僕は勘違い100%で、警察の人が来たら隠れるタイプです(笑)。

――わはは。

鈴ノ木 交通課も大嫌いでしたね(笑)。でも、話してみるといい人が多いんでしょうね。

『コウノドリ』『ハコヅメ』それぞれが作品を終えて

――さて『コウノドリ』は2020年に全32巻で完結。『ハコヅメ』は2022年6月に第一部が終了した(既刊21巻)わけですが、作品を終えた経緯や、終えて感じたことなど教えてください。

鈴ノ木 僕の場合、終わらせる時期だなというのがありました。取材に行っても、もう描いてしまっていたものが多く、後半の方は、目新しいというだけで妊婦さんが怖がるような症例しか描けなくなっていた。

 別に怖がらせようと思っているわけではないんです。産婦人科の先生に気軽に聞けないことってあるじゃないですか。ひょっとしたら自分だけかなという不安とか不満が、漫画を読んで、それが特別なことではないと伝えたいと思っていたのが、だんだんできなくなってしまって……。それで一旦ここは閉めたほうがいいなというのが、終わらせた理由ですね。

――週刊連載が終わってしまって、ポッカリと空いてしまった感じはありましたか?

鈴ノ木 連載が終わってすぐにコロナになってしまったので、明日から何をしようかという感じでしたね。ただ、それまで息子との時間もなかなかできなかったので、コロナで学校も休みになっていた息子と散歩でもしようかといった、なんでもない時間を過ごせたんですよ。

2022.09.10(土)
文=岡部敬史