鈴ノ木 いやいやいや。連載の合間に暇つぶしでネームを描こうって発想がないですからね。ネームを3年前から作っているなんて、ビックリだけど(笑)。

――休みたいという気持ちもそれほどなかったんですか?

 休みたいですけど……休むっていう選択肢が思い浮かばなかったです。休めばよかったですね(笑)。今、思えば。

鈴ノ木 「やすみこ」なのに(笑)。

 損しましたね。

休みすぎると歯車がでっかくなって回せなくなってくる

――先ほど、泰さんの新しい歴史物というのは、『ハコヅメ』連載中に描いたネームから始まったという話がありましたが、鈴ノ木さんの『竜馬がゆく』(原作・司馬遼太郎/『週刊文春』連載中)はどうやって始まったのでしょうか?

鈴ノ木 これは声をかけていただいたんですが、初めは「漫画かぁ」って(笑)。たぶん僕はそんなに漫画が好きじゃないんでしょうね。

 えー!

鈴ノ木 また漫画に戻るのかぁって。休み過ぎたってのもあるんですけど。

――どれくらい休んでいたんですか?

鈴ノ木 2年くらいですかね。休みすぎると、動かすための歯車がどんどんでっかくなって、回せなくなってくるんですよ。本当にだらっとしている人間で、外を眺めるだけの1日でも平気なので「やりましょう!」って強く思わないとできないんです。坂本竜馬で司馬遼太郎先生じゃないですか。プレッシャーもあって「できないですよ」って最初は言ってました。

 僕は『おーい!竜馬』(小山ゆう・作画/武田鉄矢・原作/小学館)が好きで、高校生のときに影響を受けて、あれより面白い坂本竜馬なんて描けないって思ったんです。でも、もうあれから30年経ってるし、新しい竜馬を描こうと思わなくてもいいけど、新しいものとして描けるんじゃないかと言われまして……。それで、どうしようかな、ダラダラしたいしなと奥さんに相談したら「お前、なに言ってるんだ。もう十分ダラダラしただろ! こんないい話ないよ」って。そういうふうに後押しされて始めました。僕はなんでも妻任せですね。

2022.09.10(土)
文=岡部敬史