産科医・鴻鳥サクラを中心に新しい命が生まれる産科医療の現場を描いた漫画『コウノドリ』。2020年に惜しまれつつも完結した本作だったが、先月から新シリーズ「新型コロナウイルス編」の集中連載を「モーニング」にて開始して話題となっている。
作者・鈴ノ木ユウ氏は、現在「週刊文春」でも『竜馬がゆく(原作:司馬遼太郎)』の連載を始めるなど精力的に活動中。そんな鈴ノ木氏に2年ぶりに新シリーズを描く経緯や『コウノドリ』への思いを語ってもらった。
社会の注目を集める医療現場、そこを漫画として描く恐ろしさ
『コウノドリ』の連載は、コロナ禍のいわゆる第1波の頃に完結したのですが、その頃は、コロナ編を描くことはあまり具体的に考えてはいなかったんです。
かつてないほどに医療現場に社会の注目が集まる中で、それを漫画として描くことの恐ろしさもあったと思います。当時医療漫画を連載されていた漫画家さんたちは、みんな苦しかったんじゃないでしょうか。
『コウノドリ』という漫画は、本当に多くの医療従事者の方々に支えられていた作品です。
医療監修でお世話になった医師の方々とは連載完結後も連絡を取っていたのですが、少しずつコロナ禍の現場の話を聞く機会もあって。連載でお世話になったことへのお礼も込めて、コロナ禍が終息した後でその過酷さを振り返り、医療従事者の方々を労うような気持ちで、コロナ編を描けたらいいのかなと思うようになりました。
一番過酷な現場にいる人が見た世界
連載時からお世話になっていた、りんくう総合医療センター産婦人科の荻田和秀先生に相談したところ、協力したいと言ってくださって、それなら描けるかな…と思い着手し始めました。
現場を取材させてもらえたのは第5波の終わりごろだったのですが、感染対策のゾーン分けも厳しく、病院の内部をあっちこっち見て回るのは難しかったんですね。なので、助産師さん、産婦人科の先生、感染症内科の先生など、多くの方々から、コロナ禍を始まりから振り返っていただくようにして、じっくりお話を伺いました。
2022.05.23(月)
文=文春コミック