それを防ぐための方法は、例えば洋服ならハンガーラックに1シーズン分まとめて一目瞭然にすること。服をどうしても減らせない人には、海外旅行用の大きなバッグにお気に入りの服を5日分だけ入れて、その服だけでしばらく生活してもらい「じゃあ今クローゼットに残っている服は全部捨てられるね」とアドバイスすることもあります。

 

 でも、シーズンが終わるごとにクローゼットを見直して定期的に断捨離するなんて、ADHDの人には向いていません。この後話すテーマにも重なりますが、先延ばししてしまうからです。だから、1個洋服を買ってきたら1個捨てるというような方法も薦めています。掃除も“ついでついで”でちょこちょこやったほうがいいですね。トイレに入るついで、風呂入るついで、といった感じで。その日の汚れはその日のうちに落とす。

――でもその“ついで”の習慣がなかなかつかないんですよね……。

中島 一度、泣きを見ると変わることもありますよ。ひどく部屋が散らかって、床中に物が散らばっているような状態になると、もう触りたくもなくなるじゃないですか。溜め込めば溜め込むほど掃除にかかる労力と時間が増えるので、手をつけるハードルが上がってしまう。

 そういう経験をすれば「あんなに痛い目に遭うぐらいなら、“ついでついで”で少しずつやったほうがいいな」と身をもって知れるんです。

 以前、食器洗いを溜めすぎて箸が腐ったという人がいました。その人はやっぱり「次からなんとかしないと」と思ったみたいでしたね。でも、どうしてもやる気が出ないということだったので「お箸が何膳もあるから洗わなくてもご飯が食べられちゃうんじゃない? 1膳しかなければ洗うしかなくなる」と言って、食器を全部捨ててもらいました。

――えー! すごい。

中島 洗わざるを得ない状況を作るために食器を減らす。それなら物が減って片付くし、絶対洗うので散らからなくなります。脱いだ洋服が片付かないなら、洋服を減らして洗わざるを得ない状況を作る。部屋全体を片付けたかったら、友人を家に招く約束をして、片付けざるを得ない状況を作るんです。

2022.09.05(月)
文=「文春オンライン」編集部