つまり、赤い右矢印が表示されたら、うっかり右を押しそうになるところを、グッとこらえて左を押さなければいけない。この「グッとこらえて」というのが、衝動性を食い止めるブレーキの機能なんですね。その機能がADHDじゃない子どもよりも、ADHDの子どものほうが弱かった、という研究結果が出ているわけです。

 だからすぐに荷物の中身を見たくなっちゃうし、計画を立てる前に飛びついてやりたいことやっちゃうし、片付け中に脱線しちゃうんですね。

 ブレーキをかけたり計画を立てたりといった機能は、脳の前頭葉が担っているのですが、その前頭葉の発達が少し遅れている、未熟な状態なのがADHDであると言われています。

無理なく片付けるための仕組みづくり

――片付けられないメカニズムはわかりました。では、具体的にどうすれば片付けられるようになるでしょうか。

中島 まず「使ったものを元の場所に戻せない」という問題がありますよね。多分、いつもハサミを使用する場所の、ものすごく近くにハサミ置き場があれば、すぐに戻せるんですよ。でも、大抵の家はハサミが2、3本しかないから、遠くまで移動してハサミをとって、使ってから戻すまでにも距離がある。それで面倒くさくなってしまうんですよね。

 だから私は家中にハサミを置いてます(笑)。米袋を開ける用、荷物を開ける用、台所用、息子の部屋……至る所にハサミがあるから、近い場所にすぐ戻せるので散らからなくなりますよ。

 

――戻すまでの手順が多いと面倒くさくなってしまうということでしょうか。

中島 一番やってはいけないのは、ハサミケースにしまって、引き出しの中に入れて……と手間がかかる片付け方をすることです。「ハサミがあそこにある」とすぐにわかってパッと戻せる、ワンステップ収納がおすすめ。

――片付けられない原因に「置き場が決まっていない」も挙げられていましたが、ワンステップ収納を意識して決めればいいんですね。

2022.09.05(月)
文=「文春オンライン」編集部