――すごくよくわかります。仕事から帰ってきた時に「早く座りたい」「すぐに食事がしたい」という気持ちが先走って、カバンや脱いだ服を散らかしたままにしてしまうことがあります。
中島 原因その2は、そもそも物の置き場をしっかり決めていないこと。例えば、自治体からの郵便物や税金の振込用紙など、何か重要な書類が届いたとします。もともと本棚の一角や手帳の中に“重要書類を入れる場所”を作っておけば、そこに片付けられますよね。
でも、物の置き場を決めず行きあたりばったりで生活していたら、ダイニングテーブルのすみっこなんかに書類がどんどん溜まっていってしまう。いつも山ができていて、時には雪崩が起きて……(笑)。そんな計画性の無さもADHDの大きな特徴のひとつなんです。
原因その3は、うちの小学生の息子がまさにそうなんですけど「部屋を片付けなさい」って言うと、片付けてる最中に「あっ、これ懐かしいー!」とか言って、ゴールを忘れて脱線していってしまうんです。これも“不注意”と呼ばれる、注意力・集中力が持たないADHDの特徴で説明できますね。
――どの例も身に覚えがあります……。
中島 「部屋が片付けられない」という悩みには、これら3つの原因が関係していると言われています。使ったものを元に戻せない、置き場所を決めていない、片付けの途中で脱線してしまう……。それがADHDの特徴だと言っても、「えーっ、それは誰だってあるんじゃない」とか「甘えじゃないか」と感じる人もいるかもしれませんが、ちゃんと研究結果も出ています。
イギリスの心理学者エドモンド・ソヌガ・バークらが、ADHDの子ども71名、その兄弟71名(うち65名はADHDではない)、ADHDではない子ども50名を対象に、9種類の神経心理学検査を行った研究です。
検査のひとつに、ストループ課題という「うっかり別なことをしそうになるのを我慢する」、抑制制御の力を測定するものがあります。方法は、子どもたちにコンピューターの画面上の表示に従ってマウスのボタンをクリックするゲームを行ってもらうというものです。画面に緑色の矢印が表示されたら、矢印と同じ方向のボタンをクリックすればいいのですが、赤色の矢印が表示されたら、左右が逆になります。
2022.09.05(月)
文=「文春オンライン」編集部