金沢 剛さんの芝居って、こうやって喋っている時と演技している時とで実はあんまり乖離してない。裏表がないというか、役の中に「人」が出ていると思うんです。そこが好きなんですよ。

長いキャリアの中のドでかい出会い

草彅 演技経験のない子たちが画面の中であれだけ輝いているのを見ると、演技って何なんだろうなと思います。自分の中で、いつも論争しているんですよ。「役をしっかり作って、これまでとは変わった自分を見せたいな」「いや、やっぱり自分のままでいいんだ」と。今の僕の結論としては、監督の言う通り、どの役も「草彅剛」でいいんじゃないかなと思う。

金沢 例えば『ミッドナイトスワン』で剛さんが演じたトランスジェンダーの役は、「なりきっている」と絶賛されたじゃないですか。あの役もじゃあ、本人的には?

草彅 凪沙という人は僕自身の現実とはかけ離れているけれども、凪沙も僕なんだと思っています。

金沢 長いキャリアの中で、役者さんから影響を受けたことっていろいろあると思うんですけど、ドでかい出会いってありますか? 高倉健さんとの出会いは大きかったと伺ったことはあるんですが。

草彅 そうですね。あとは大杉漣さん、田村正和さん。

 

ものすごく自信になった、田村正和さんからの一言

金沢 田村さんの話、聞かせてほしいです!

草彅 ご一緒した『じんべえ』(98年)というドラマで、僕は眼鏡をかけた少しおとなしめの青年の役だったんですけど、松たか子さんが不良に絡まれたところを僕が庇って、追い払うシーンがあったんですね。その回のオンエアが終わった後に、田村さんが「草彅君、あのシーン良かったよ」と褒めてくれたんです。冗談なんだけど、「この間の回のオンエアは、僕よりあなたのほうが素晴らしかったよ」と。まだ20代前半だったからものすごく自信になりました。

映画「サバカン SABAKAN」

1986年夏、長崎。小学5年の僕は、家が貧しくクラスメートから避けられている竹ちゃんと“イルカを見るため”ブーメラン島を目指す。主役の子役・番家一路&原田琥之佑を支えるのは、尾野真千子、竹原ピストル、貫地谷しほり、岩松了、草彅剛ほかの豪華キャスト。

2022.08.12(金)
text=Daisuke Yoshida
photographs=Takuya Sugiyama
hair&make-up=Eisuke Arakawa
styling=Akino Kurosawa