そして日本酒と向き合う時間が増える中で、「タレントとして外側から日本酒に関わるのではなく、もっと内側から深く関わりたい」という思いが強くなっていったんですよね。だから日本酒タレントではなく、酒屋のオーナーになろうと決めたんです。

――全く異なる業界で新しいチャレンジをするのは、怖くなかったですか。

 

失敗したら自分で自分を褒めるべき

高野 もちろん、全く不安がなかったわけではありません。でも、「これから新しいことにチャレンジできるんだ」と思うと、楽しい気持ちのほうが大きかったですね。

 失敗を恐れていると「チャレンジするのは怖いな」と思いますが、私は失敗したら自分で自分を褒めてあげるべきだと思っています。だって失敗は、自分で選んで行動しないと起きないものだから。

最初はパソコンの使い方もわからなかった

――「ゆい酒店」をオープンする時は、たくさん失敗を?

高野 ずっと芸能活動しかしてこなかったから、パソコンを触ったこともほとんどないし、経理のことも全然わからない。基本的な社会人スキルがなくて……。

 ほかにも、名刺の渡し方とか電話応対の仕方とか、一般企業で働いた経験がある人なら当たり前にできることを全然知らなかったんですよ。だから、周りの人たちにサポートしていただきながら必死に覚えました。

――芸能界からのキャリアチェンジを考えた時、高野さんと同じように困る人は多いかもしれません。

高野 高校3年から芸能界でキャリアをスタートさせた私が戸惑っているくらいだから、小学生や中学生から芸能界で頑張っている子はもっと困るかもしれませんね。学生生活を犠牲にしてまで頑張ってきた子ほど、芸能界以外の場所での頑張り方が分からなくて、悩んでいる印象です。

 特にアイドルのキャリアは短くて、まだやりたいことが見つかっていない状態のまま、卒業を迫られてしまうこともある。

 そもそも、小さい時からアイドルやタレント活動をしている子に対して、卒業や引退後のキャリアの選択肢が少ないのが課題だと思っています。

2022.08.01(月)
文=仲 奈々