そして、耳の奥にある「内耳」という部分に気圧を感じる場所があり、それが気圧の変化を感じると神経を介して脳に伝わる、ということがわかった。「これから天気が崩れるよ」「台風が来るよ」という情報が内耳から伝わるので、脳は「大変だ。体全体にアラートを出さなきゃいけない」と判断し、自律神経がバタバタと暴れてしまう。それが体調不良の原因だと僕は思っているんです。

 

渡辺 どんな人がなりやすいんですか? 

佐藤 もともと持病を持っている人が気づきやすいだけで、本当は、みんな同じように影響を受けているし、そういうメカニズムはみんな持っているだろうと考えています。

 ただ、天気の変化を感じ取る場所は耳だけではなく、体の端っこの所や血管、皮膚にもなんらかのセンサーがある可能性は否定できません。まだわかっていないことが多いので、それについての実験もこれから始めるところです。

松本 私は天気が大きく荒れる前に痛みが出るんです。爆弾低気圧という言葉をよく耳にするようになった10年ほど前、奥歯がものすごく痛くなったんです。3日ほどずっと痛くて、そのうち、耳の奥まで痛くなってきて。「歯医者に行った方がいいかな」と思っていたら、天気予報で「爆弾低気圧が発生しました」と。その後、低気圧が来たら、ケロッと良くなったんです。

 台風のときも同じ。「台風が発生しました」というニュースを聞くと、だんだん嫌な感じがしてくるんですが、来ちゃうと全然平気。

野宮・渡辺 ええ~!

松本 大雨もそう。降ってしまったら快調(笑)。その前までは、なんかちょっとだるかったり、朝から重くて、頭に水が入ったかと思うほど顔がむくんでしまったり。でも、雨が降ってしまうとスッキリ。

佐藤 わかります。僕が診ている患者さんでもそういう人はいらっしゃいます。熱帯低気圧がはるか南にあるときに調子がグーンと悪くなり、それが日本にやってくると、「あ、もう大丈夫」と。人によっては「曇りのときが一番嫌。早く雨が降ってほしい」と。

2022.07.15(金)
Text=Izumi Karashima
Photographs=Hirofumi Kamaya
Hair&Make-up=Tsukasa Mikami(Watanabe)