佐藤 旧宮家の男子に愛子さまと結婚してもらえば、男系男子の系譜が途切れない、なんてことを言う人もいるようです。
君塚 男系にこだわりすぎて、時代錯誤な議論に走っていますよね。
愛子さまの「意味深なひと言」
小田部 万世一系と言いますが、そもそも今の天皇家の系図は明治以後にできたものなのです。日本武尊や神功皇后、菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)など、明治以前には天皇とされていたが、明治以後に系図から除かれた天皇もいらっしゃいます。長くなるので詳細は控えますが、つまり現在の神武天皇以後の万世一系図が成立したのは1926年のことであって、現在でも議論は続いているわけです。さらに言えば、実在した天皇をどの天皇からとするかにも諸説あります。
君塚 神話の天皇をどう位置付けるかですね。今後の議論によっては変わる可能性もあるのでしょうか。
小田部 あります。そもそも皇室の祖神である天照大神は女性だったという説もあるし、最初の神様に性別はないとする説もある。神武天皇のY染色体を正当な皇位継承の論拠とするのはそもそも無理がある。
愛子さまが結婚されて、皇室が悠仁さま一人ぼっちになってしまう前に、我が国の皇室も変わらなければいけません。「そして誰もいなくなった」ではシャレにもならない。「愛子天皇」の現実味は、皇位継承者が皆無になる現実と表裏一体なのだろうと私は思います。
佐藤 正直、20歳を迎えた愛子さまに対して、今さら「天皇に」というのはいくらなんでも押し付けすぎなのでは、と私も思っていました。ただ、この前の会見で両陛下へのお言葉としておっしゃっていた、「これからも長く一緒に時間を過ごせますように」という言葉が気になってまして……。「皇室に残っても私は大丈夫ですよ」という意味なのかなとか(笑)。
小田部 国の象徴として世界との交流を深めている天皇家がなくなった場合、日本の国家と社会は何を中心にひとつになるのでしょうか。皇室は日本社会を世界において安定させる力を持っている。そのことを若い世代までが理解して考えていかない限り、本当に危ういと思います。
2022.07.04(月)
文=「文藝春秋」編集部