佐藤 たしかに(笑)。
君塚 もともと王侯貴族はあまり自己を表に出してはいけないと考えられてきました。威張ることもなく、何かあっても弱音を吐かずに平静でいるというのが、先ほども話題に上がったノブレス・オブリージュであると。ですが、時代が変わり、国民の大半がいわゆる中流階級もしくは労働者階級になると、彼らは「本音の女王」を望むようになった。ダイアナは赤裸々に語る、まさしくそんな女性だったのです。
小田部 望まれる君主の姿は「国民と距離の近いもの」になっていったのですね。
君塚 現在ではホームページはもちろん、21世紀に入り、王室はツイッターやユーチューブ、インスタグラムも積極活用しています。
小田部 日本の皇室では考えられませんが、英国ではエリザベス女王が国民の想いを汲み取り、変化のチャンスをつかみ取ったわけですね。
君塚 失礼な言い方ですが、「このおばあちゃんは国のために全身全霊を捧げているのだ」と、国民が本音の部分で納得したのです。
佐藤 それで言うと、日本の皇室も変わるチャンスを逃してはいけないのではないですか。いまのまま国民の関心がどんどん皇室から離れていくことが1番恐ろしいですよね。
小田部 眞子さんがご結婚され、愛子さまは成年を迎えられた。まだ見ぬ悠仁さまのご結婚相手やお子さまに頼ってただ待っているわけにはいかないのは、皆わかっているはずで、正直、もう遅いくらいです。
先ほども述べたように、この20年間、皇室を混乱させてきたのは「男系男子への固執」だと私は思います。世論調査では国民の8割以上が女性天皇を支持しているのです。反対しているのは安倍晋三元首相や一部の論壇誌を中心とする男系男子固執派です。
佐藤 いまや、皇位継承者は秋篠宮さま、悠仁さま、そして86歳の常陸宮さまだけになってしまいました。
小田部 昨年末にも皇位継承をめぐる政府有識者会議の答申が出されましたが、(1)女性皇族が結婚後も皇室に残る案、そして(2)旧宮家の男系男子を養子に迎える案の両論が併記されるにとどまった。小泉政権下に出された答申に比べて、議論は後退してしまいました。
2022.07.04(月)
文=「文藝春秋」編集部