世界を俯瞰して見ながら巧みに人やものごとを動かしていくゲームメーカー的な特性は年々、盤石なものとなっている。それは日々、世の中の動きに目を凝らし、学び、他ジャンルの人たちと出会い教養を深めているからにほかならない。

 櫻井のこの知性的な特性はフィクションの世界でも生きる。21年4月期、広瀬すずとW主演した連ドラ「ネメシス」(日本テレビ系)では探偵役を演じた。過去に様々な仕事を経験してきたことが探偵業に役立っているという博識キャラは櫻井ならではだろう。広瀬すずをサポートしながらの狂言まわし的な役割もバツグンの安心感があった。

 物語世界に没頭することなくどこか冷静なまなざしが役の計り知れない底深さにも通じるところがおもしろい。過去作「先に生まれただけの僕」(17年)、「家族ゲーム」(13年)、「ザ・クイズショウ」(09年)などでも存分に発揮されてきた。

 知識が豊富過ぎて、また、ものごとを深く考え過ぎて底知れず怖いという要素はどんなに演技力があっても演じきれない部分である。演じることができる俳優の限られるジャンルで櫻井翔は数少ない貴重な演じ手。たまにはフィクションにも出演してほしいと願う。

 以上、ざっと、嵐休止後、ドラマ活動を中心に、メンバー4人の仕事を振り返った。ここに飄々としてつかみどころなく天才肌な大野智がいないことが寂しくもあるが、どこかで自由に暮らしているのかなと思わせる。それもまた彼のキャラらしい気もする。それでもやっぱり5人が共演する「ピカンチ」シリーズをもう一回観たい。

2022.06.05(日)
文=木俣 冬