読者は空から私を眺めている
――この先、描きたいテーマなどは?
日渡 今は特にありません。描きたい瞬間が来たら描くだけです。
砂浜にどんな絵を描いても、波でさらわれて消えていきますでしょ。たぶん私はそんなマンガ描き。なのに、そんな変なマンガ描きを読者さまは星のように輝いて、空で眺めてくださっている。本当に心から感謝しております。
幸いです。かつての拙作『1000億のともだち』(白泉社文庫『星は、すばる。』に所収)の中に稚拙な詩を書きましたが、まさにそんな感じです。
──この詩の後半「想いは大気にとけ 光のごとく 暗闇をとび越え まなざしとなって 運ばれる」の部分は、『ぼく地球』で木蓮やロジオンが語る言葉に通じますね。
今はSNSのエゴサで読者反応を知る
――かつては「読者は手書きのファンレターを送り、先生はコミックス欄外(連載時は縦1/4ページの広告スペース)の《たわごと》からメッセージを送る」という、双方向のコミュニケーションが成立していました。
ところが今は、読者が感想をSNSで発信する時代です。先生の実感として、紙のファンレターはいつ頃から減ってきたのでしょうか。
日渡 お手紙が減ってきたのは、やはりネットの隆盛と共にです。
編集部を出て、お手紙を抱きしめながら電車で涙ふきふき帰宅した素敵な時代もありましたが、今ではSNSでエゴサして、皆さまの呟きを、それこそ聴き耳頭巾被った状態で覗かせていただいております。
――SNSをご覧になるんですね。
日渡 楽しいですよ。今も昔も、届く想いは同じなので。中にはスパッと切れるような言葉もあれば、一瞬で癒してくださるような言葉もあります。
作家さんによってはSNSでお応えされている方々もいられるようですが、私はそれは避けております。返答のキリがなくなりそうですし、好きに呟いていてほしいのもあり、触らずに観ていたいです。読者さまは空に輝く星々なので。
2022.06.03(金)
文=前島環夏