コロナをきっかけに様々なことに挑戦
ーーこの3年間を通して見ると、前半は旅に行ったり外食したり、大勢で集まったりしているのが、後半は家飲みが増えました。明暗というか、コントラストがものすごくはっきりしていますよね。
コロナ禍という世界的な出来事があったことはもちろん大きいですが、自分の中でもすごく変化があった3年間でした。その変化というのが予定調和ではまったくなく、それまで自分がやらなかったことをやるということが立て続けにあったんです。例えば40代にして車の免許を取るとか、石垣島に長期滞在するとか、家を建てるとか、アウトドアやスポーツ観戦をするとか。
ーーそれまでは、興味がないことにはまったく食指が動かないタイプだったんですか?
そうですね。飲食店が好き、お酒を呑むことが好き、料理が好き。それだけでやることがいっぱいありましたし、これさえあれば自分は満ち足りていると思い込んでいました。もちろん満ち足りてはいるのですが、世の中にはもっとおもしろいこと、興味が持てることがあって、そういうことがある日突然やってきたりするんだなと。
だから、人生って先のことはわからない。「自分はこう」と決めつけて、自分の可能性から排除してしまうのはもったいないなとものすごく感じました。それをこの日記が教えてくれたような気がします。
ーーハナコさんは、これまでの本作りではレシピ本を作っている感覚はなく、揚げ物だったりホームパーティなど「なんだか大変そう」と思われがちなことのハードルを下げる、そのヒントを伝えたいと書かれていました。では、この本でハナコさんが伝えたかったことって何でしょうか?
人って本当に忘れちゃう生き物だなと思うんです。例えば今回の本づくりでも自分のことなのに、過去のInstagramを新鮮な気持ちで読んでいました。そもそも人は、楽しいときや嬉しいときに写真を撮る。そういうポジティブなものを書き残しておくって、自分にとっての嬉しいことの貯金みたいな感じだと思うんです。それを見返すことで、また嬉しい気持ちになれるから、それって自分が落ち込んだときの救けにもなるし宝物。何が楽しかったのか、何が美味しかったのか、誰と会えたのか。それを書き残しておいて本当によかったと思いましたし、それを誰かにお裾分けできるのであれば、なお嬉しい。おこがましいんですけれど。これが売れたら第2弾も作りたいですね。
ーーこの先Instagramがなくなって、次に新たなツールが出てきたら、ハナコさんはまた楽しいこと、嬉しいことを書き残し、私たちにお裾分けをしてくれますか?
それはもう絶対にやるでしょうね。
ツレヅレハナコ
食と酒と旅を愛する文筆家。ホームページ時代を経て、現在はInstagramインスタグラムを中心に日々の飲んだり食べたり美味しかったりしたことを綴っている。雑誌やウェブへの寄稿多数。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP研究所)『女ひとり、家を立てる』(河出書房新社)『ツレヅレハナコのお取り寄せ』(立東舎)など。
Instagram:@turehana1
まいにち酒ごはん日記
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2022.06.03(金)
文=和田紀子
写真=ツレヅレハナコ