壁や屋根を取り払い建物内部と歴史の層をあらわにする

イギリス国教会の総本山・カンタベリー大聖堂。拡張と再建を繰り返したこの教会には、他に例を見ないほど異なる建築様式が混在する。本書では、建物の内部が、壁を取り去ったクロスセクションの手法で描かれている
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 豊富かつ詳細な写真とイラストが盛り込まれたこの本には、視覚的理解をより深めるための多種多様なアイディアが満載だ。

 まずは、バーチャルに壁や屋根を取り払い、その断面から建物の内部と歴史の層をあらわにしたクロスセクションの手法。これによって、読者は実際に中に足を踏み入れたかのごとき感覚を味わうことができる。

 また、巨大建造物をバードアイ、つまり鳥瞰図でとらえることで、全体の構成や位置関係が手に取るように分かる。まさに自分が空を飛んでいるかのような気分になれるはず。

 その一方、テキストも充実。歴史的背景や建造者、建築様式が分かりやすく解説にまとめられ、囲み記事とキャプションには興味深いエピソードが綴られる。簡にして要を得た文章には思わず引き込まれてしまう。

 大人から子どもまで、幅広く楽しむことができる一冊だ。誕生日やクリスマスのプレゼントにも最適のアイテムといえよう。

 この本でじっくり予習してから実際に掲載スポットを訪れたなら、よりディープに建築を堪能できることは間違いない。

 次の旅では、どの名建築を目指す?

『世界歴史建築大図鑑』
ドーリング・キンダースリー 編
金子務 日本語版監修
坂崎竜 訳
発行 原書房
定価 ¥12600
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2013.11.01(金)