《あのカメラに向かって笑うんですよ》舞台「千と千尋の神隠し」上白石萌音&橋本環奈ダブルキャスト秘話 から続く
宮崎駿監督の名作アニメを舞台化した『千と千尋の神隠し』の東京公演が3月29日(火)に千秋楽を迎える。4月からは大阪、福岡、札幌、名古屋と全国で上演される予定。東京千秋楽を記念して、イギリスの演出家・ジョン・ケアード氏、映画に続き出演する俳優の夏木マリ氏、スタジオジブリ代表取締役でプロデューサーの鈴木敏夫氏の座談会を特別に全文公開する。(文藝春秋2022年2月号より。前後編の後編/前編はこちら)
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夏木 これから稽古がはじまりますが、一体、どんな舞台が出来上がるのか。ジョンの頭の中にあることだからまだ何もわかりません。
私がやっぱり一番気になっているのは、湯婆婆の出で立ち。映画と同じく2頭身なのでしょうか?
ジョン ずっと大きい顔でいるということは考えていません。こんなに素晴らしい夏木さんのような役者をマスクで隠すようなことは絶対にしたくない。日本は動物園、遊園地、野球場、どこへ行ってもマスコットがいるじゃないですか。私は、あれを見るたびに、「中に入っている人は可哀そうだな」と、中の人が気になっちゃう。もちろん、今回はいろんな仕掛けも施しますが、基本的には観客の皆さんに才能あふれるキャストたちの生の演技をきちんと届けたいです。
鈴木 私もジョンの考えに賛成。お客さんも演者の顔をちゃんと見たいはずですよ。
ジョン ちょっとした秘策はありますけどね。これは宮﨑さんがよくやっていることですが、サイズをコントロールして遊ぶということは舞台でもしたいなと。例えば、映画での坊はものすごく大きく見えますが、あるシーンでは、「あれ、そこまで大きくないのかな」って感じる。映画と同じように、湯婆婆は怒ると顔がより大きくなるようなことは、ちょっと考えていますね。
夏木 面白そう!
鈴木 確かに、宮さんは、シーンによって登場人物の顔の大きさや背の高さを変えているんですよ。
2022.04.04(月)
文=「文藝春秋」編集部