今年の米アカデミー賞で見事、国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』は、日本映画としては初の作品賞を含めて4部門にノミネートされていた。授賞式前、その背景にある〝アカデミー賞の変化〟をカリフォルニア在住の映画評論家・町山智浩に聞いた。
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―来る3月28日、第94回アカデミー賞が発表されます。濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門でノミネートされているわけですが、今回選ばれるに至った理由は何でしょう?
町山智浩(以下、町山) アメリカでもよく読まれている村上春樹の原作を大胆にアレンジしていることと、ロサンゼルスでの公開が年末ぐらいに始まって、それがちょうど投票時期と重なり印象が非常にフレッシュだった、というのは大きいと思いますね。
―そもそも、アカデミー賞はどんなふうに選考を?
町山 映画芸術科学アカデミーという団体がありまして、その会員の投票で選ばれます。会員は映画業界で働く人々で構成されていて、もとは、アメリカの映画労働組合の賞なので、それぞれの職種の投票で候補が決まります。脚本家は脚本賞を各1人、監督は監督賞を各1人と、それぞれ選ぶ。でも、作品賞のノミネーションだけは会員全員が投票し、1人10本選ぶんです。いま、アカデミー会員って約9500人いるんですよ。
ナゾに包まれた「アカデミー会員」の正体
―結構いますね。
町山 6年ほど前までは約6500人でした。しかし、2016年、俳優部門で有色人種が1人もノミネートされず、ウィル・スミス夫妻が怒って授賞式ボイコットを呼びかけ、「オスカー・ソー・ホワイト(オスカーは白過ぎる)」とアカデミー賞への非難の声が高まり、アカデミーは、非白人や女性や若い世代、非ハリウッドのアジアやヨーロッパの映画関係者にも声をかけ、会員を3000人増やした。
今は日本人も結構いますし、会員の3人に1人くらいは、ハリウッドの外の映画人です。だから、『ドライブ・マイ・カー』に票が集まったというのもあると思う。カンヌ国際映画祭で脚本賞などを獲っているので、ヨーロッパの人の票も多かったのではと。
2022.04.02(土)
文=辛島いづみ