わが国ではまだ、成人食物アレルギーの正確な有病率は明らかになっていませんが、成人の1~2%程度ではないかといわれており、これらの数字はいずれも欧米の報告と類似しています( 『食物アレルギーの診療の手引き2020』 「食物アレルギー診療の手引き2020」検討委員会、研究開発代表者:海老澤元宏)。
なぜ成人になって突然発症するのか
では、子どもの時には起こらなかった食物アレルギーが、なぜ成人になってから発症するのでしょうか。それには、発症のメカニズムが関係しています。
そのメカニズムの1つとして、ある食物を毎日のように食べていると、次第にその食物に対するアレルギーになることがあります。今まで問題なく食べられていたものでも、食べ続けているうちにアレルギーを発症することがあるのです。
もしかすると、食べているものに新しくアレルギーになりやすくなる原因が生じたり、体質が変化したりといったことがあるのかもしれませんが、それが何であるか、現在の医学では十分に分かっていません。
もう1つのメカニズムは、鼻や目、気管支の粘膜、皮膚などのアレルギーとの関係です。
成人になってからでも、アレルギー性鼻炎、喘息(ぜんそく)、アレルギーの関係した皮膚炎などを発症する例は多数あります。
仕事などで特定の食物を頻繁に扱っていると、鼻・目・気管支・皮膚などを介して、その食物に対してアレルギーになることがあり、それがさらに悪化していくと、その食物を口にすることによって食物アレルギーを起こすケースもあります。
食物ではなくても、花粉やダニのような環境中に普通に存在するアレルゲンが食物アレルギーに関与することがあります。花粉やダニなどの環境アレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、環境アレルゲンに対してアレルギーがある人が食物アレルゲンに対してもアレルギー反応を起こしてしまうわけです。
これを「交差反応」といいます。交差反応とは、免疫細胞が、構造が似ているアレルゲンを間違って異物とみなして過剰な免疫反応を起こすことをいいます。
2022.03.21(月)
文=福冨友馬