B'z稲葉浩志さんと「この曲、一緒に叫びた~い!!!」
――本作でアッシュが深く関わるのが、伝説のロックシンガー・クレイです。日本語吹替版をB’zの稲葉浩志さんが担当されると聞いたときの第一印象はと言うと……?
「え~! この曲、一緒に叫びた~い!!!」と思いました(笑)。『SING/シング』とは全然関係ない稲葉さんの曲が頭の中でず~っと鳴っていて、今も鳴っています(笑)。
――劇中では見事デュエットされています!
私、みんなに羨ましがられると思います。だって、稲葉さんが女性とデュエットしたこと……これまであったかな? 聞いたことがないですよね。日本語吹替版の楽しみのひとつとして、稲葉さんの歌声を楽しみになさってください。
――アッシュにとってクレイは憧れの存在です。長澤さんも俳優になる前、憧れの方はいましたか?
今の事務所はオーディションを受けて入ったんですが、その募集のポスターが、私のときは水野真紀さんだったんです。
当時、水野さんはテレビ番組でお菓子作りをよくしていて、「お菓子を作るのが上手な、きれいなお姉さん」という印象で、大好きで。水野さんがいるから「じゃあここでやりたい!」と受けたんです。
実際、水野さんとはコンテストの当日にお会いして、やっぱり本当に美しい方でした。お菓子作りは一緒にはしていないけれど(笑)、そんな思い出があります。
「言葉の強さ」を知っているからこそ起こる「人との化学変化」
――クレイは第一線を退いて15年間籠もっていましたが、アッシュが寄り添うことで、もう一度表舞台に立つことを考え始めますよね。クレイはなぜ彼女の言葉に耳を傾けたのか、長澤さんはその経緯についてどう思いましたか?
アッシュのように言ってくれる人を、クレイはどこかで待っていたのかな、と思いました。人は社会に出て、人と関わることで自分なりの存在意義を見つけたり、成長を求めたり、人との化学変化で自分自身を育てていくということがすごく必要。クレイも「嫌だ、嫌だ」と言いつつも、虚勢を張っていたというか、そういう言葉を待っていたんでしょうね。
なので、アッシュの存在や言葉というよりも、アッシュがたまたまそこに居合わせただけだったのかな、とも思います。
だって、物語の中でクレイは世界的スターで、みんなの憧れですよね。自分にとってそんな人と出会える奇跡は、本当に限りなくゼロに近いわけだから。そう考えると、アッシュはただみんなの意思の代表というか、運がよくそこに居た人だったのかなとも思ったんです。
――アッシュがクレイのことを尊敬して好きだからこそ、慮っているニュアンスも感じました。
やっぱり好きな人には嫌われたくないですから、空気を読むんじゃないですかね。本当に大切に思う人は、相手が嫌だと感じることにズカズカと入っていけないと思うんですよね。
実際、目の前にしたら本当に思っていることのひとつ言えないことも、人との化学変化だと思います。ちゃんと人の気持ちや空気を察して言葉を発しているから、言葉の強さを知っているからこそ、アッシュのような行動が取れるんじゃないのかなって。
実際、目の前の人と話すとき、言葉に気をつけて喋りますよね。それが、人と関わることの良さなんじゃないかと思います。
2022.03.17(木)
文=赤山恭子
撮影=杉山拓也