友情結婚も「異性」でなければ成立しない

 ドラマではアロマアセクの咲子と高橋が同居を通して、「家族(仮)」として恋愛を介在させない共生の可能性を探るという展開が描かれます。「突然の同居から恋に発展する」というラブコメあるあるの一種の型をつかって、その差を見せつけるというのはとてもうまい手法だと思います。

 「家族になりませんか?」という咲子の同居提案に首をかしげる高橋でしたが、半年前に祖母を亡くして寂しかったことや、最近悩まされているお節介なご近所さん対策になると思い直し受け入れます。家族や同僚は恋愛感情なしの付き合いを理解できないでいますが、ふたりは生活費や家事の分担について詰めながら、恋愛や肉体関係なく幸せな家族になることを模索していきます。

 ここから見えてくるのは、(結婚という必要性を別にして)アロマアセクでもライフパートナーと一緒に暮らすことを望んでいるという人もいるということ。恋愛感情や性的感情がなくても、一生ひとりでいたいというわけではないのです。現にパートナーがいるアロマアセクの当事者もたくさんいます。

 ただここで気になるのは、ドラマの咲子と高橋は一般的には「異性」であり、婚姻制度を利用できる関係にあるということ。恋愛関係にない者同士がお互いの利害の一致・考え方の一致などにより、友情や愛情などさまざまな気持ちのつながりでwin-winな婚姻を結ぶ「友情結婚」も可能なのです。

 そうすれば、この現実社会ではよりマジョリティな暮らしに合わせられ、生きやすくなる。だからそれを選ぶ当事者もいると思います。しかし、それができない当事者もいます。アロマアセクで同性のパートナーがいるという方もいるんです。

 現行の婚姻制度は「異性」でないと結婚はできないことになっているので、当事者が同性と法的なパートナーになりたくても今はできません。

 1クール前のよるドラ「阿佐ヶ谷姉妹のほほんふたり暮らし」では(恋愛関係のない)女性同士の軽やかな生き方や新しい家族の形が描かれていました。このように社会の規範からちょっとはみ出したり抵抗するような作品は、これからも増えていくことでしょう。ですが、同性婚をはじめ、どんな人達同士でも法的なパートナーシップが結べる制度・システムがあることが今求められる望ましい社会の姿。そこへの働きかけも同時に必要なのだと思います。家族とは、場所と記憶が共有する人間的なつながりなのですから。

2022.03.13(日)
文=綿貫大介