今時そんな恋愛誰もしていないし、押しつけるつもりはもちろんないんですけど、でもそんな「ベタベタの恋愛」をしたっていいと思っている人もいるはずなんです。初恋の甘酸っぱさやキュンと胸が苦しくなる感覚ってきっと誰もがそれぞれの形で経験していて、初恋を懐かしく思わない人って少ないんじゃないかな、と思うから、そこからつなげられたら。

 

世の中の「初恋」需要はすごいボリューム

――それぞれ相手は違っても、思い浮かべる「気持ち」は共通だと。

東村 そうですね。それに、世の中の「初恋」需要ってすごいボリュームだと思うんですよ。

 たとえば菅田将暉くんや吉沢亮くんがたまたま同じ学校にいて初恋だったという女の子って、きっと何百人も、もしかしたら何千人もいますよね? そんなふうに、芸能人の数だけ「初恋」があると思ったら、この作品を読みたいと思う人だってたくさんいるはずだとも思ったんです。

――初恋って特別ですからね。

東村 私の友だちのお母さんで、「中学生の時に西郷輝彦に告白された」という初恋ネタを勲章にしている人がいるんです。

 西郷輝彦さんは鹿児島県谷山市(現鹿児島市)のご出身で、そのお母さんと中学校の同級生だったそうです。告白された時、彼女は恥ずかしくて断ったそうなんですが、今でもテレビに西郷輝彦さんが出てくるたびに「この人同級生で、中学生の時に告白されたんよ」って嬉しそうに話してくれるんですよ。そのお母さんが、西郷さんの話をする時のキラキラする感じが私はすごく好きで。こんなふうに初恋を自分の栄養にできる人ってステキだなと思うんです。初恋にはそんな力もあるのかなって。

「初恋」が足かせになる場合、ならない場合の違い

――ただ、初恋を引きずって次に進めない、という不毛なケースもあるのでは。

東村 あります、あります! 悪い例(笑)! 

 私の知り合いの若い男の子で、まだ20代後半なんですけど、初めてつきあった初恋の子のことを今でも引きずって前に進めないという子がいるんです。

2022.03.03(木)
取材、構成=相澤洋美
写真=松本輝一/文藝春秋
ヘアメイク=後藤るみ
スタイリスト=藤原わこ