「ファッション業界は出遅れている」のか

 ファッションは、時代が生み出す空気を敏感に捉えて形にしている。ある意味で時代を作ってきた産業とも言える。人類の歴史を語るうえで欠かせないものと言っても過言ではないだろう。コルセットからの解放やミニスカートの流行が「女性の社会進出」を象徴したように、ファッションと歴史、社会には大きな関係性がある。時代が移り変わるのに合わせて流行を生み出し、変化してきた。だからファッション業界において、それが必然的であろうが、強制的であろうが、“変わること”はそもそも得意なことではないだろうか。

 その意味で業界は大きな変貌を遂げつつある。「ファッション業界は出遅れている」と言われた数年前とはまるで異なり、昨年は「第1回 国際サステナブル ファッション EXPO 秋」という日本初のサステナブルファッション専門の展示会が開催され、多くの来場者で賑わった。繊維業界が独自開発した環境にやさしい素材を競うように発表し、活気に満ちていた。新しい繊維や染めの技術、サステナブルなサプライチェーン、それを取り巻く労働環境が改善され、どこよりも先行して持続可能性の高い産業になる時代がやってくることを示した。

普段から徹底してエコグッズを吟味

 問題はそのスピード感だ。地球環境が悪化する現実は刻々と私たちの生活に迫り、問題が可視化されている。SDGsの「つくる責任 つかう責任」において、作り手側が責任をどれだけ果たせるのかと同時に、私たち消費者も「選ぶ」ことが大きな力であり、心がけて買わなければならない。私自身も、環境に負荷をかけない、長く使えるといった視点で、普段から徹底してエコグッズを吟味し、使っている。どちらか一方だけの努力では解決できないほど、事態は深刻であることを認識しなければならない。

 いつしか特別に選ぶ必要がないほどに、全てのファッションが環境に配慮された持続可能なものになる日が来ることを心から願っている。

2022.02.05(土)
文=冨永 愛