くじらの胃袋から 8キロものプラスチックゴミが!?

 私たち人間がより便利で豊かな生活を追求し続けた結果、自然の生態系バランスが崩壊。そのことによって、さまざまな環境問題が起きている。

 大きな問題となっているのが地球温暖化と海のプラスチック汚染。2018年、タイの運河の漂流したくじらの胃袋から、約8キロものプラスチックゴミが出てきたというニュースには、ショックを受けた人も多いだろう。

 最近よく耳にする「サスティナビリティ(持続可能性)」という言葉は、ときと場合によってさまざまな解釈がされるが、基本的には、地球の生態系の限界を超えることのないようにバランスを取り、人類と地球がともに満たされながら生活する、という意味で使われている。

いち早く取り掛かったジュリーク、そしてニールズヤード

 美容業界では、海外のブランドがいち早くサスティナブルな取り組みを始めた。例えばジュリーク。オーガニックやエシカルという概念が今ほど知られていなかった1985年の創業当時から環境を守る活動を開始。

 寒暖差が激しいオーストラリアの広大な土地にオーガニック認証の自社農園を持ち、自然と対話しながら植物を育て、採れた種からまた新しい植物を育てている。一見当たり前のことのようだが、自然栽培や、遺伝子組み換えをしないことは、環境に優しく、そして種を守ることになる。

 ニールズヤード レメディーズは「人が健康で美しくあるための製品を扱うには地球環境や人に負担をかけるべきではない」という考えの下、1981年の創業当時から、収穫量の減った植物の精油は終売にし、自主的に取り扱いをやめると言う独自のルールを設けている。

 これも言葉にすると簡単だが、コスメの開発には時間がかかるので、原料を一から変えるのはとても勇気のいることだ。また、英国にある店舗はすべて再生エネルギーで営業し、自家農園や工場にはソーラーパネルを設置する試みを行っている。

 2019年日本に上陸したトゥー フェイスドは、「Always Cool, Never Cruel(動物に優しく、クールに)」をスローガンに、クルーエルティーフリー(非動物実験)を実行している。

 悲しい話だが、私たちがきれいになりたいと願う一方で、コスメを作るには小さな命が犠牲になっていることもある。動物愛護が盛んな国では、クルーエルティーフリーは当たり前になっているが、日本はこの手に関しては後進国と言えるだろう。

 サスティナビリティのために基金を設立したのは、ロクシタン。1976年の創設時から、創業地であるプロヴァンスの資源育成と原料の持続的な調達に注力してきた。

 2006年から、この活動をより強化するためにロクシタンファウンデーション(基金)を設立。今では年間約100万ユーロ、50以上のプロジェクトを支援している。

2020.03.29(日)
Text=Maki Wakamatsu

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