料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、フードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。
どんなものであれ、作ろうと思ったそのこと自体が尊い。今晩はひと品、作ってみませんか?
明けましておめでとうございます。
この連載をはじめてから3回目のお正月。本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
さて三が日、いかがでしたか。
おかげさまで私はゆっくりと過ごすことができました。上の写真は元日のお雑煮。東京風のベーシックなおすましで、具は鶏肉、角餅、ユズ、いただきものの「赤巻き」という富山県のカマボコに、青菜はちぢみホウレン草を使っています。
冬の楽しみ、ちぢみホウレン草(葉っぱが寒さでくしゃっと縮むからこの名前)は甘みが強くて好きなんですよ。下ゆでして加えてみたら、おすましといい相性! 元日から発見でした。
さて、本コラムには「罪悪感撲滅自炊入門」なんてタイトルが付いています。今回はちょっと初心に戻って「自炊と私」みたいなことを考えさせてください。
なぜ作るのか
自炊する理由も人それぞれですし、複合的なものだと思います。
考えてみて、私にとって一番の理由は
「その日そのとき、自分が食べたいものを用意できるから」
ここに尽きるな、と。
特にたいそうなものを作るわけではないんです。
例えばこの三が日、おせちやおつまみばかりで食物繊維が足りてなかったなあ、お酒も続いていたな……と思ったとき、体が欲したのは味噌汁でした。
疲れたとき、飲み過ぎた翌日、あるいは気持ちが萎えているとき、私は自分の作った味噌汁が飲みたくなります。だしはちょっと濃いめにして。でも、かつおぶしからだしをひくわけじゃなく、手軽なだしパックで私はじゅうぶん。
今回は食物繊維をしっかり摂りたかったので、ワカメをたっぷりと。これも保存のきく乾燥ワカメを入れるだけ。面倒な下ごしらえもありません。
玉ねぎと、冷凍してある油揚げも一緒に。
自分が欲するものを自分で作れて、まかなえる。なおかつ体の調子を考え、食材を調合するようなことができる。というのが、私にとって自炊の良さを思うときです。
これは1月2日の夕方、衝動的に作ったキムチスープ。
辛酸っぱいものを急に体が欲したんですね、元日から2日昼にかけておせちを食べてて、どうにもそういう舌になり。
いりこだし(頭とはらわたを取るのが定番のやり方ですが、上品なおすましでも作るのでなければ省いていい、そのまま煮てOKというのが私の考え)に刻みショウガを入れて沸かし、ネギ、白菜キムチ(汁が出てれば汁ごと)、醤油、ゴマ油、あらびき唐辛子ちょいでしばし煮る。このときは余ってる厚揚げに大根も入れて作りました。
キムチスープはお酒が続いてるときにもね、いいんです。沁みますよ。自炊は私にとって「気分的なセルフメンテ」であり、体と心をなだめてくれるものになっています。
2022.01.18(火)
文・撮影=白央篤司