家には誘惑が沢山あって勉強どころではない。しかし、塾の自習室にいけば、友達も頑張って勉強しているし、自分もやろうという気になる。『二月の勝者』でも、上杉海斗は自習室がある塾に移って、勉強をするようになる。自宅には過干渉な母親がいて、ウザったいし、部屋は成績がいい弟と一緒だ。だが自習室に行けば、そうした環境を気にせずに勉強することができる。

 

塾のシステムと子どもの性格は合ってる?

 作中にはこんなシーンもある。海斗が自習室で島津潤(桜花のトップ生)ととっくみあいの喧嘩をすると、講師の黒木は「今後、島津くんと揉め事を起こさぬよう。なぜなら、あなたはΩ(一番上のクラス)入りを本気で狙える能力があります。彼と机を並べる日が来ますので」と言葉をかけた。その後、実際に彼はΩクラスにあがる。これにより海斗の自己評価の低さはリセットされ、島津とも仲良くなり、モチベーションを高めていく。

 塾で友達を作らない方が勉強に集中できる生徒もいるし、仲間がいることによってやる気がでる生徒もいる。家で勉強した方がいい生徒もいれば、自習室を必要とする生徒もいる。

「うちの子どもは今の塾と合っていないのでは」と考える時に、子どもの地頭や学力が塾のレベルに合っていないのだ、と考える親は多いだろう。確かに塾によって生徒の学力層は違ってくる。だが、中には“塾のシステム”と合わないために成績不振に陥っているというケースもあるのではないか。

 もし、そうした悩みを抱えている親がいたら、『二月の勝者』のように、自分の家庭や子どもに合ったシステムの塾に転じることを検討してみてもいいだろう。

2022.01.09(日)
文=杉浦由美子