正式なルールがあったわけではなく、だいたいの目安がそうだった。ま、ぼくのケースは書き手のトシが持ち役に反映したのだろう。
原則でしかないので、ぼくの書いた「75点の天才!」(第1話になったので多くの人が目にしただろうが、飽くまでたまたまの第1話である)はカツオが主演を務めている。
初期の『サザエさん』では磯野家の隣に作家の伊佐坂難物先生が住んでおり、これはぼくが主として書いていた。番組の進行中に、難物がよその局に出ることになり転居させたので、ぼくの手から離れた。のちにその話が壊れたため、伊佐坂家はまた『サザエさん』に戻ったはずだが、そのときは今度はぼくが番組から離れていた。
初期の『サザエさん』制作ルール
長期にわたる番組なので、生身の人間どうよう有為転変があるのは致し方ない。提供東芝の名前さえ消えたが、今なお『サザエさん』はフジテレビ番組網の一角を守って、最長不倒の記録を更新しつつある。
はじめに宣弘社の松本プロデューサーが敷いた設計図——
・時事ネタを使わない(地震など)。
・マイナス方向の話題を出さない(家計の赤字など)。
・流行に左右されない(ファッションなど)。
などなど。
時代の移り変わりで揺れに揺れるルールだが、とにもかくにも墨守を続けた結果のロングランであってみれば、虚心にスゴイという他はない。
【続きを読む】《名探偵コナンの裏側》「毒殺はいいけど、もう30人くらい殺したと思うよ」有名脚本家が直面した作品完成までの“厳しいハードル”
《名探偵コナンの裏側》「毒殺はいいけど、もう30人くらい殺したと思うよ」有名脚本家が直面した作品完成までの“厳しいハードル” へ続く
2021.10.10(日)
文=辻 真先