すると怒られた。
「あんた、ソレ裏切りでしょうが!」
「——」
実は不二家も書いてます、『オバQ』です——。
なんて白状したら、首を締められたんじゃないか。
のちに円谷プロのSFX番組で、やはりスポンサーの担当さんと揉めたこともある(このときは、タイムリープがわからんと叱られた)。それで痛感したのだが、大企業の歯車の1個であるみなさんと、矮小ながらも個人事業を営むシナリオライターとは、そもそも歯車比が違うから噛み合わない、という現実であった。
これが『エイトマン』では、会議に現われるのが提供社丸美屋の社長ご本人であったから、裏切りだなんてちっぽけなことは仰らない。
われわれライターのひとりひとりに握手を賜って、
「視聴率30パーセントをよろしく」
それだけであった。
励ましの甲斐あってか番組は30パーセントをキープした。すると次の会議では、
「40パーセントをよろしく」
と仰って、われわれをギョッとさせた。
話が脱線しました。
そんないざこざがあっただけに、大企業の1社提供ならその種の文句が来ることはなかろうと、安心して書き始めたのです。
「ガタの来ている扇風機」「突然消える電球」ネタはNG
ついでだからその後の話もしておこう。
家電産業として視聴者にじかに向き合うスポンサーなのだ。販売中の電気製品に瑕疵があると思われては絶対に不都合である! 当たり前のことだが、放映開始時のぼくはそんな局面を考えつかなかった。
あっと思ったのは、ぼくが気に入っていた原作の4コマで、ガタの来ていた扇風機が電源を入れると少しずつ踊り出し、ついには帰るお客さんの後にくっついて玄関までノコノコ出て来るという場面だ。
「まあ、お客さまをお見送りしてるのね」
ヒョコヒョコと移動する扇風機をアニメで見せれば、さぞ愉快だろうと思ったのだが、受けつけてもらえなかった。仮にも東芝マークの扇風機に、そんなガタが来るはずはないのである。
2021.10.10(日)
文=辻 真先