研究所では本科を経て1993年、大学卒業と同時に研修科の1年となる。1997年には座員に昇格して、2011年まで在籍した。この間、1993年12月にシェイクスピア作の『女たちの十二夜』で初舞台を踏み、白石加代子、高畑淳子、生瀬勝久などといった個性派俳優を相手に無我夢中で演じた。1996年には森田芳光監督の『(ハル)』で映画デビューし、さらにNHKの連続テレビ小説『ふたりっ子』への出演により一躍人気を集める。なお、名前の聖陽の読みは、デビュー以来、本名と同じ「まさあき」だったが、2013年に「せいよう」と改めている。

『きのう何食べた?』に出演した理由

 近年も、ドラマや映画とあわせて舞台に立ち続ける。目下、井上ひさし作の舞台『化粧二題』を各地をまわりながら再演中だ。本人に言わせると《僕が思うのは、役者っていただいた役がご縁で続いていくものだってこと。だから目の前にある役を全うすることに精一杯。舞台を中心にやりたいとか、映画がいいといった希望はないんです》(※4)。

 そう語った雑誌記事では、《強くて男らしい役のオファーをいただくことが多いですが、『えっ、この人がこの役やるの?』と思われるような“逆振り”をしたい》とも話していた。冒頭にあげたドラマ『きのう何食べた?』に出演したのは、この翌年、2019年である。同性愛者の役はこれ以前にも舞台『トランス』(1998年)で演じた経験があるが、映像作品では初めてだった。彼自身、自分のそんな姿をちょっと見てみたくて、ぜひやらせてくださいと引き受けたという(※5)。

 

 役を演じているあいだは、思考回路や感性までその人物になりきるタイプだとも述べている(※2)。そのためには台本を読み込む以外にも努力を惜しまない。『JIN―仁―』で坂本龍馬を演じるにあたっては、土佐弁を体得するため何度も高知に行った。滞在中には居酒屋にも通ったという。彼にとって居酒屋は、その土地に生きている人たちのことが一番わかる場所らしい。

2021.09.28(火)
文=近藤正高