避難生活が心配です。
ペットにしてあげられることは?

Q4 ペット連れで避難所に入れなかった、という話を聞きました。避難所以外の選択肢は?

 残念ながら、ペットを飼っていない人との間でトラブルが起こったり、飼い主さんが迷惑をかけまいとせっかく入れた避難所から出て行ってしまうケースは多いです。日本ではペットと暮らす人の数は、全体の1割くらい。マイノリティーなんですね。欧米のようにペットを飼う人口が増えて、ペットが社会の一員になれば状況は変わってくるはずですが、今はまだ、通常の避難所に行きにくいという場合も。住んでいる地域に、ペット同伴の避難所があるか、一度調べてみるといいでしょう。

 もし車があれば、最初は車中泊がおすすめです。プライバシーも確保できて他人に迷惑をかける心配もないので、ペットも安心して避難できます。ただし、あまり長期間では動物にもストレスになるので、2、3日、長くても1週間くらいが限度でしょう。まずは一度、車中泊をして、落ち着いて今後のことを考える。そこから避難所に向かってもよいと思います。

 安全がしっかりと確保できる場合は、もちろん自宅避難も考えられます。当たり前ですが、ペットにとっても人間にとっても、一番安心できる場所ですので。日頃から、大型の家具を固定したり、キャットタワーやサークル、ケージの転倒防止やガラスに飛散防止フィルムを張るなど、室内の安全対策を心がけましょう。

 飼い主さんの留守中に災害が起こる可能性を考えて、キャリーバッグなどペットが逃げ込める場所を作っておくことも大切です。

Q5 避難生活中に、ペットのためにしてあげられることはありますか?

 何よりも、一緒にいてあげることが一番です。周りの状況が見えるとストレスで不安になってしまうので、キャリーケースの中にいれて、毛布を掛けてあげるなどするといいですね。スリングに入れてあげるのもいいです。動物は狭くて暗いところを好むので、人間からすると狭すぎないかな? と思うくらいでもちょうどいいんです。

 もう一つは、安定剤を使用すること。これは、熊本地震の際にとても有効でした。処方箋が必要ない、医薬部外品で効き目が緩やかな漢方のようなものでいいので、飲ませてあげると落ち着きます。猫の場合は、マタタビも有効です。興奮する子もいるのですが、穏やかになる子もいるので、与えてみるといいと思います。

 犬の場合に多いのは、環境が変わったストレスによる嘔吐と下痢。緊張によって消化器に症状が出やすいので、出てしまったら吐き気止め、下痢止めを飲ませる必要がありますが、事前に安定剤を与えておけば、原因となるストレスを緩和することができます。

●お話を伺ったのは……
德田竜之介(とくだ りゅうのすけ)さん

獣医師。竜之介動物病院(熊本市)院長。麻布大学院獣医学修士課程修了。1994年に竜之介動物病院を開院。早朝から深夜まで診療を行う。九州動物学院の理事長を務め、動物業界に携わる若者の育成にも取り組む。

竜之介動物病院

所在地 熊本市中央区本荘6-16-34
電話番号 096-363-0033
診察時間 7:00~12:00、17:00~22:00
年中無休
http://ryunosuke.co.jp/

ペットと防災ハンドブック『どんな災害でもネコといっしょ』(左)
ペットと防災ハンドブック『どんな災害でもイヌといっしょ』(右)

災害が起こった時、大切なペットを守るにはどうすればよいか。飼い主が普段からしておくべきことや心構えを分かりやすく、しっかりとまとめた本書。ペット同伴避難の必要性を訴え続け、環境省のガイドライン作りにも協力している獣医師・德田竜之介先生の監修のもと、災害とどう向き合うべきかを総合的に提案してくれます。防災に関する書籍は多くても、ペット防災の関連書籍は少ない中で、本当に頼りになる2冊。

ペットと防災ハンドブック『どんな災害でもネコといっしょ』 監修:德田竜之介監修 小学館クリエイティブ 1,430円
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