——「かかってないけどかかってる」がいかにストレスなく上手にできるかというのが、テレビではとても大切なのかもしれないですよね。

橋本 そうかもしれない。

——催眠術のみならず、お二人はかかりづらかった。

中野 そうですね。全くかからなかったですね。むしろかかろうとしてるのに。

女芸人は、「やればやるほどモテない」

——お二人が芸人を続けるモチベーションはなんでしょうか。すごい成功したいとか、冠番組を持ちたいとか、お金持ちになりたいとか、モテたいとか、そういう気持ちはありますか。

橋本 別にモテたいわけでもないし。

中野 モテないしね。

橋本 そうそう。やればやるほどモテない。ブリーフ穿いたり。歯を黒く塗ってたり。

中野 Aマッソの加納愛子さんなんて、あの子は素晴らしくて。面白ければ面白いだけ男の人にモテるというか。すごいうらやましい。

橋本 ねえ。うらやましいね。

中野 でも、みんな何をモチベーションにやってるんだろうと思って。

——今まで取材をした方たちもそこを聞くと「うーん……」みたいな感じなんです。

中野 ……好きだからだと思いますね。好きじゃないと、こんな。女性としてはマイナスなことを言われるだけなので。

——女性としてマイナスなことを言われたりしましたか?

中野 今は本当にそういうことを言われない社会になって、それは先輩たちが頑張ってくださったからで、すごくありがたいんですけど。私たちが始めた……12年ぐらい前かな。その時は、関西でやってたんですけど、そういういじりが当たり前で。私、それまで直接ブスとか言われたことなかったんです。

 

「芸人なら、容姿いじりは当たり前」という呪縛

——ああ、容姿について……。

中野 だからビックリして。で、あんまり受け入れられなくて。でも、それを言われる職業だから乗り越えないとっていう洗脳はずっとあるように感じます。いまだにその呪縛は解けてない。当時はひどかったよね。

橋本 ひどかったね。

2021.08.19(木)
文=西澤千央
写真=鈴木七絵/文藝春秋