●ドラマは短距離走、舞台は長距離走

――ベテランスタッフの方が多い現場ですが、印象深いエピソードは?

 特に怒られたというような経験はありませんでしたが、石田秀範監督からは「もっとカッコ良く走れ!」など、厳しくご指導いただきました。ライダーはほかの作品とは違い、とにかく、いろんな人に憧れられる、カッコいいと思われる行動や仕草が求められるんです。そこを意識するよう叩き込まれました。

――18年には、「仮面ライダージオウ」(第9、10話)内で、オーズとして友情出演されました。

 久しぶりのオーズだったので、現場で感覚を取り戻すのが大変でした。とはいえ、その間に「劇場版」にゲスト出演させていただいたこともありましたし、パラレルワールドな世界観もあったんです。そのため、「ドラマ版」を踏襲して演じるというよりは、別の世界で演じるような難しさが強かったです。

――自身にとって、転機となった作品は?

 ライダー後の12年に出演させていただいた舞台「里見八犬伝」です。初舞台で、初めての殺陣で、役者としての積み上げ方、すべてが勉強になりました。ドラマって、スタートしてからゴールまでが短く、その走る本数が多い短距離走みたいな感覚。それに対して、舞台は練習を長くやって、本番もいかに集中して走り切るかという長距離走みたいな感覚でした。お客さんを意識した演じ方や表現法も全然違いますし、使う筋肉も違う気もします。

●故郷の「ふるさと大使」を務めるまでに

――殺陣といえば、「鼠、江戸を疾る」(14・16年)では時代劇ドラマに挑戦されました。

 立ち回りを見せるような役ではなかったのですが、時代劇自体、初めてだったこともあり、衣装や所作など、とても苦戦しました。その前には、朝ドラ「純と愛」に出演したり、NHKさんには続けてお世話になったこともあり、ご年配の方など、ライダーのときと違うファンの方が増えていったことも嬉しかったです。

――13年、出身地である秋田県由利本荘市の「ふるさと大使」を務められました。

 由利本荘市は秋田の中でも多くの有名な方を輩出しているところなので、正直なところ「僕が務めていいのかな?」という気持ちでした。でも、とても有難かったですし、由利本荘の魅力をいろんな方に知ってもらいたいと思いました。小倉智昭さんや柳葉敏郎さんらが中心になってやられている秋田県人会も盛んで、できるかぎり参加させてもらっています。

――15年公開の『進撃の巨人』では、フクシという映画オリジナルキャラを演じられます。

 オリジナルということもあり、原作を意識するようなことはなかったんですが、調査兵団において、どういう立ち位置がいいのか、ということを考えながら演じました。ワイヤーアクションも楽しかったです。もともと原作ファンだったこともあり、お話をいただいたときの嬉しさも大きかったですが、キャスティングが発表されたときの周りの反響も大きかったですね。

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渡部 秀さん(わたなべ・しゅう)

1991年10月26日生まれ。秋田県出身。08年「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリ受賞。10年「仮面ライダーオーズ/OOO」でドラマ初主演。橋口呂太役で、16年よりドラマ「科捜研の女」のレギュラー出演を務めている。

映画『科捜研の女 -劇場版-』

京都・洛北医科大学で女性教授が転落死する事件が発生。科捜研のマリコ(沢口靖子)たちは鑑定を開始するが、殺人の決定的な証拠は見つからず、自殺として処理されそうになる。そんな矢先、国内外で同様の転落死が相次ぎ、京都府警は再捜査に乗り出す。
https://kasouken-movie.com/
9月3日(金)より公開

Column

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2021.08.13(金)
文=くれい 響
撮影=末永裕樹