すでにトップ監督の一人に数えられている人気アニメ作家だが、細田作品はまだ、作家としての完成形を見せる前の繭の中の試行錯誤に見える。 

 7月16日に公開される最新作『竜とそばかすの姫』の主人公・すずは女子高生である。出世作である『時をかける少女』以来の少女ヒロイン作品となる最新作だが、単純に世間のメインストリームに戻ったというより、これまで少年を描くことで取りこぼしてきた「少女の物語」をもう一度少年の物語と融合させる作品を予感させる。

『サマーウォーズ』で描いたサイバー空間と大衆の意識、『おおかみこども』や『バケモノの子』で描いた異端や獣性の排除という、これまでの細田守作品のモチーフをジグゾーパズルのように統合していることが予告編からは伝わってくる。

 その賛否の分裂も含め、日本のアニメーションにとって代替することのできないユニークな作家のひとつの集大成を見る前に、過去作品をもう一度振り返ってみておきたいと思う。 

2021.07.16(金)
文=CDB