アフリカ向けファンドへの関心は徐々に高まりつつある

不破直伸氏。投資銀行、スタートアップ役員を経て家族とウガンダに移住。現在はJICAのスタートアップ・エコシステム構築専門家。
不破直伸氏。投資銀行、スタートアップ役員を経て家族とウガンダに移住。現在はJICAのスタートアップ・エコシステム構築専門家。

―― ピッチコンテストでは日本の民間企業とアフリカの起業家のマッチングが実現しましたが、そもそもアフリカではスタートアップ企業の資金調達はかなり難しいのでしょうか?

不破 ファンドは成長途上で、2020年はコロナの影響を受け投資額は減少しましたが、投資数は順調に増加しています。

 例えば日本のベンチャーキャピタルが投資するアフリカの企業はトップのトップの上澄みの部分で、JICAが支援しているベースの部分というのは、ビジネスとして未だスタートする前やスタートし始めたばかりの企業が中心となり、信用・実績や担保も十分に持たないので金融機関もあまり相手にしてくれないんです。

 現地は担保主義なので、担保もない若い起業家は身動きがとれない。どうにもできない中で、じゃ、一緒に見つけに行こうよ、ということで、一社ずつ伴走しながら支援しているというのがJICAの現状です。

―― 変化の手応えはありますか?

不破 まだまだスタートしたばかりで手応えというほどではありませんが、現地の人のマインドセットは徐々に変わってきているんじゃないかなと思うんです。

 これ、すごく大事なところだと思うんですが、自分の斬新なアイデアを形にすることによって自信がつき、事業として活動し始めている方もいますし、それを見た人のマインドセットもまた、「あ、こういうふうにできるのか」と変化しますから。そういう影響が徐々に広がっていくと、大きな効果が出てくると思いますね。

―― 日本でもアフリカに目を向ける投資家は増えているのでしょうか。

不破 日本にもアフリカ向けベンチャーキャピタルがあり、ここに投資している個人の数も増えてきています。2~3年前は5億円を集めるのが大変だったのに、今では4倍にも増えている。投資家層の裾野が広がってきていて、徐々にではありますが、みんなが関心を持ち始めていると思っています。

渋澤 でも、ポテンシャルを考えると、僕はまだまだだと思います。これはアフリカに対してだけではないのですが。日本には、いわゆる「タンス預金」が全国で50兆円とも100兆円とも言われているんですね。

 もし1万札を丁寧に50兆円分重ねると、どれぐらいの高さになると思います? 100万円で1センチメートルと考えると、なんと500キロメートルなんです。500キロメートルですよ。宇宙ステーションにぶつかってしまうぐらいの量のお金が、社会的にも経済的にも何の役にも立っていない。その0.01%でもアフリカへ回したら、すごいことですよね。

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不破 確かに! ただ、実際のところ、個人がアフリカの企業に投資する方法が、日本だとなかなかないんですよね。

渋澤 それが一つの課題で、まだまだだと言ったのはそういうこともあるんです。若い人がアフリカに関心を持って、「僕も10万円投資したい」と言っても、現状ではなかなか手段がない。でも、クラウドファンディングといったマイクロファイナンス的な手段はだんだん広まってきていますし、これからも増えると思います。

―― 一般の人々の中にも、アフリカのような途上国の役に立ちたいという社会貢献への意識は高まっていると思いますが、どんな行動がどう役立つのか、実感できないという部分もあると思います。

渋澤 実感するのは実は簡単で、消費です。

 例えば、私が事務局を務めているアフリカ起業支援コンソーシアムでは大企業の会費を財源としてアフリカで起業する日本人を支援するプログラムを実施していますが、最優秀賞を受賞したのはウガンダのシングルマザーに職を与えるために現地でプリントバッグをつくって日本で売るというビジネスを立ち上げた女性です。

 そのバッグを日本で買えば、アフリカ社会における弱者の雇用につながるわけで、かなりダイレクトにインパクトを感じることができると思います。

不破 そうですね、自分で物を直接買うというのが一番分かりやすいですね。自分の欲求も満たされて、経済活動につながって現地に利益が還元されて、社会貢献できていることが一番実感しやすいですよね。ちょっと価格は上がりますが、フェアトレードの製品を購入するのもいい。

渋澤 投資という面では、先ほども言ったクラウドファンディングなどはインターネットベースのものですので、自分のお金がどういうふうにどこに使われているかを自分のデバイスで見ることができて、実感が湧くんじゃないでしょうか。

2021.05.13(木)
取材・文=張替裕子(giraffe)
撮影=三宅史郎