若い世代がマジョリティーであるアフリカは、まさにブルーオーシャン

2020年1月のProject NINJAの発表会にて説明する不破さん。
2020年1月のProject NINJAの発表会にて説明する不破さん。

―― 今回はアフリカ各国からビジネスプランを公募し、審査によって絞り込まれた会社が決勝でプレゼンテーションを行ったのですね。

不破 そうです。19カ国で募集を実施したのですが、応募総数は驚いたことに2,713社にも上ったんです。審査の基準は、ポストコロナ時代に成長する企業を明確に選ぶというもので、今回は10社を選考しました。

 決勝はオンラインで行われ、それぞれのプレゼンテーションを見た日本企業関係者が事業連携や投資をその場で判断するほか、一般視聴者にも優秀賞を決めるアンケート投票に参加していただきました。

―― アイデアの新しさや社会的意義だけではなく、ビジネスとして成立させることができるのかも選考基準となるわけですね。

不破 そうです、持続性です。渋澤さんがおっしゃったとおり、持続性のある社会をつくっていくために何ができるかと考えた時、その手段の一つが起業してお金を稼ぐことだと考えています。

 といっても、視聴者の皆さんは自由に投票してくださっていいんです。日本からすると、地理的にも心理的にもハードルがあり、文化も生活も大きく違うアフリカに関心を持ってもらうことが大きなテーマですから。

―― 決勝には渋澤さんもコメンテーターとして参加されていましたね。

今年の2月に行われたNINJAの決勝戦でコメンテーターとして参加する渋澤さん。
今年の2月に行われたNINJAの決勝戦でコメンテーターとして参加する渋澤さん。

渋澤 はい、起業家の方々が3分という限られた時間できっちりプレゼンテーションをまとめていて、本当にびっくりしましたし、彼らを含め関係者の熱量の高さに感銘を受けました。

 私がアフリカに関心を持ち始めたのは15年ほど前になるのですが、その頃はアフリカのビジネスに興味を持っている人は本当に少なかったと思うんですね。それが今では、セミナーをやっても急速に参加人数が増えてきている。そうした潮流は、今回のピッチコンテストでも感じられましたね。

不破 確かにそうですね。

渋澤 NINJAの名称にも「with Japan」とあるように、まさに「Made with Japan」というのがこれからの令和時代の成功体験になればいいと僕も期待しているんです。かつての昭和時代の「Made in Japan」というものは、主に先進国の大量消費を満たす大量生産として大成功した。

 しかし、それがアメリカなどからバッシングを受ける結果となり、平成時代は「あなたの国で作ります」と「Made by Japan」に変わったわけです。それはそれで一定の成果があったのですが、これからの令和時代は「Made with Japan」になってほしいなと本当に思っていて、それをドライブするのが主に10~30代なんじゃないかと考えているんです。

 彼らは30年後、40~60代になっているので、明らかにこれからの社会のど真ん中にいる世代ですよね。しかし、高齢少子化社会の日本において、彼らは人口的マイノリティーです。一方で、アフリカではその世代が明らかなマジョリティーなわけです。だから、相互関係の「Made With Japan」は、これからの日本にとって大事な国家ビジョンだと思います。

―― アフリカという地はブルーオーシャンで、そこで「Made with Japan」としてタッグを組めれば、大きなビジネスチャンスになると。

不破 僕も渋澤さんがおっしゃるとおりに思っていますね。今回のピッチコンテストでも、「with Japan」をどう実現するかが一番の目的だったんです。

 一つは法人間の連携を形にすることで、今回は8社ほどの日本企業に賛同いただいて、現地スタートアップのマッチングができました。民間企業同士の連携で、お互いビジネスとしてWin-Winのシチュエーションがつくれたというのは非常に大きな成果なんじゃないかなと思っています。

 もう一つは、法人だけではなく一般の方々の関心を高めること。それについては、幅広い世代の一般の方々が2,000名以上も参加してくださったので、その意味でも「with Japan」が体現できた一つの事例になったといえるのではないかと。

渋澤 まさに「with」というところがすごく大事なポイントですよね。

不破 はい。彼らがお互い成長することによって、持続性のあるビジネス、持続性のある活動になってきますし、それが社会課題への貢献につながっていくと思うんですね。そういったものを、我々は今後も種を蒔いてつくり出していきたい。

 正直、僕らだけでは何もできないので、さまざまなステークホルダー、関係者のお力を借りつつ、徐々に花を咲かせていきたいと思います。

2021.05.13(木)
取材・文=張替裕子(giraffe)
撮影=三宅史郎