©紺吉

 仮に上記の状況に追い込まれたとき、自分ならどういう行動を取るか少し考えてみて欲しい。例えば一つ目の問い「飲み会に誘われたときの対処法」だが、BL漫画のモブとしては「飲み会を断る」は不正解。なぜならモブとはあくまでメインの登場人物の背景に徹するものなので、「不愛想」「一匹狼」などの目立つ特性を付与されてはならないからだ。

 正解は「飲み会に参加しつつ、この世界でメインに据えられそうな人物を避ける」。どのような人物を避けるべきか、また、飲み会帰り際の振る舞いについての注意点など、作品内で主人公が非常に事細かにモブとしての振る舞いをレクチャーしてくれる。

 あるあるネタを逆手に取った新しい視点の展開が見事で、BL作品好きなら既視感で楽しむことができ、たとえBLを知らない読者でも、コミカルかつ分かりやすい描写のなかで主人公の努力と苦労に共感すること請け合いだ。

3、「様々な作品から主人公が出張してきているような」“脇役”たちの王道BL

 本作では「脇役=他作品ではメインを張るキャラクター性を持つ登場人物」という構造があり、やはり一癖も二癖もあるキャラクターたちがあくまで「モブで居たい」主人公の周りでBL作品の王道的な展開を繰り広げる様子も面白い。

 もちろん、主人公が学生のため、登場する脇役たちも「学生」がメインにはなる。しかし、幽霊・腐男子漫画家・記憶喪失・惚れた男の結婚式に出る男・女装男子なんかが登場するあたり、ある意味「BLならなんでもあり」の世界観。いうなれば、様々な作品から主人公が出張してきているようなものである。面白くないはずがない。

 作者がBL漫画をかなり読み込んでいるので、作品内に登場するセリフ・回数自体は少ないキャラでも、その背景にあるストーリーを彷彿とさせる言葉選びが絶妙で、読み手の想像を掻き立ててくれる。また、あくまで漫画内では淡々とあるあるネタを並べながら皮肉交じりにコミカルな突っ込みを入れつつ、「でもみんな、こういうの好きでしょ」という要素も入れてくれている。腐女子として、重層的な作品の魅力と福利厚生の手厚さを感じずにはいられない。

2021.04.04(日)
文=いか