ボーイズラブという割とニッチな分野を題材とする作品ながら、「次にくるマンガ大賞Webマンガ部門2019」で11位、「WEBマンガ総選挙2019」で4位に選出されている『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』。

『絶対BLになる世界 VS 絶対BLになりたくない男』1巻 ©紺吉
『絶対BLになる世界 VS 絶対BLになりたくない男』1巻 ©紺吉

 漫画内のキャラクターでありながら、自分が「BL漫画世界に住むモブ顔をした登場人物である」という自覚を持った主人公に対し、次々とBL漫画のお約束展開が降りかかるメタ要素満載の不条理ギャグ漫画である。2020年には人気声優によるドラマCDが発売されており、今年3月には実写ドラマの放送も決まっている。

主人公の涙ぐましい「絶対BLにならない」ための健気な頑張り

 物語は主人公が自らを「俺は漫画の中の住人だ。しかもただの漫画じゃなく、所謂ボーイズラブ漫画の住人だ」と自己紹介するところから始まる。開幕からものすごく簡潔にしてスピーディな世界観紹介である。自分は「モブ顔」だからBL展開に巻き込まれることはない、とたかを括っていたところ、同じモブ顔であるはずの弟がやられた(BL的展開に襲われた)ため、そこから主人公の涙ぐましい「絶対BLにならない」ための健気な頑張りがスタートする。弟“亡き”いま親に孫を抱かせてやるために、主人公(モブなので名前はない)はこの世界のルールに打ち勝つことができるのか、というのが本作の大まかなストーリーとなる。

©紺吉
©紺吉

 今回はドラマ化などをきっかけとして興味を持った方向けに、作品の魅力をまとめてみたいと思う(先に断っておくと、筆者はいわゆる腐女子であるので、多少共感しづらい表現が出てくる可能性があることをご容赦いただきたいと思う)。

1、あまりにも解像度の高い「BLジャンルあるあるネタ」

 自分が「BL漫画世界の住人」だと気づいた主人公は、まず“敵”となる「己に降りかかってくるであろうBL漫画の王道パターン」を知るために大量のBL漫画を読み漁る。そこから傾向と対策を練っていくのだが、ここで取り上げられる「BL作品あるある」の詳細さとバリエーションの豊富さが本作最大の魅力の一つである。作者自身が大量のBL漫画を読み込んでいることを感じさせる描写に、BL作品を愛好する者であれば、思い当たる節とともに共感でくすっと笑ってしまう。

2021.04.04(日)
文=いか