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──寂しさや孤独などの苦しいシーンの中にも、ご自身の日常が反映されているのですか。

池辺 作品では日常生活を描くようにはしていますが、特定のモデルがいたり、自分自身をモデルにしたりしたことはありません。生活していて思うことや、自分だったらこう言うだろうなと思うことを時々キャラクターに言わせることはあるんだろうと思いますが、意識してセリフやストーリーに入れることはないですね。

 私が描く作品には「孤独」があるとよく言われてしまうのですが、どのキャラクターも孤独とうまくつきあっているわけでは全くなくて、むしろ寂しさに苦しんだり悩んだりして、生きづらさを感じているんです。でもそれは人生の半分で、もう半分の人生には輝くものがあるということを私は描きたいと思っていて。

 いいことも悪いことも抱えながら生きていくのが人生なので、誰だってきっと半分半分なんだと思うんです。

 

橋本環奈ちゃんの白目

──ストーリーはどうやって考えているのですか。

池辺 私、ストーリーをあまり考えないんです。日常生活で料理や洗濯や掃除したり、お風呂に入ったり、寝転がってぐうたらしている時に浮かんでくるものを描くイメージです。ああ、でも私、ぐうたらするのが得意なので、ぐうたらしている人を描くのはうまいんじゃないかと思います(笑)。

──クレーム処理に疲れて、白目で休憩するリリィさんとか(笑)。

池辺 リリィさんのシーンは、たまたま見ていたテレビドラマで、橋本環奈ちゃんがかなり長い間“白目”の変顔をするシーンが衝撃的で。実際自分でもやったら、白目に夢中になってきっと気晴らしになるだろうと想像して描きました。

 流れにまかせて描くので、流れにまかせられなくなっちゃうと、すごくつまらない話を描いてしまうんです。ムリして自分で考え出した話は自分でも本当につまらないので、自分で作っちゃだめなんだなと自覚しています。

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──ひたすら“降りてくる”のを待つんですね。

2021.03.18(木)
文=相澤洋美