通算成績について、若手の頃はまったくもって意識をしなかった。100勝、200勝はいつ達成したかも覚えていない。しかし女流棋士になって約20年、中堅からベテランに足を踏み入れようとしている今になると、途端に愛しさが湧いてくる。ひとつひとつが、私が重ねてきた数字なのだ。
夫と私は、通算成績の数字が比較的近いことが発覚した
長く将棋を指していると、毎局必ず万全の態勢で臨めるわけではなくなる。
私達は生きて、生活しているから当たり前のことだ。私が現在一番それを肌身に感じているのは出産・育児に関してだが、小さくは日々の体調から、病気や介護など、他にも人それぞれのライフイベントが発生する。置かれた状況の中で、どれだけ将棋に向かい合うことが出来たか、その積み重ねの結果が通算成績となって可視化されるのだ。
結婚式の誓約ではないが、病める時も健やかなる時も、指せる将棋はすべて指してきた。デビューしてから引退するまで、ずっと離れずにくっついてくる。通算成績はその人の棋士・女流棋士人生を集約したものなのだと思う。
2021.03.11(木)
文=上田初美