最近、年中の長女が「おもいだしてごぉーらんー」と、聴き馴染みのあるフレーズを歌っている。今月卒園する年長さんに歌のプレゼントをするそうだ。そういえば道端には、微かに沈丁花の香りが漂っている。私にとって、沈丁花は別れ、桜は出会いの花である。今年も節目の時期がやってきたのだ。

将棋界も3月が節目の月になる

 将棋界は小学生の頃に将棋道場で出会った友人と、何十年の付き合いになることも少なくない。「別れ」を体験する機会が、他の業界より少ないだろう。その分、私は「別れ」というものに耐性がなく、来年迎える予定の長女の卒園式に、果たして何枚のハンカチを持っていけばいいのか想像も出来ない。

 それにしても私が子どもの頃にも歌った歌が今でも歌われているなんて、歌って不思議なものだな、と思いながら、絶妙な音程の長女の歌を聴くのであった。

入園前の長女と桜 ©上田初美
入園前の長女と桜 ©上田初美

 将棋界も年度締めなので、3月が節目の月になる。

 今年度の私の目標は「通算300勝を達成する」ということだった。前回の記事で、目標を立てなくなったと書いていたが、300という数字は区切りが良いので、ぼんやりと目指していた。

 4月時点で、確かあと17勝くらいだったので、難易度的にもそこそこのもので、めでたく今年の1月に達成することが出来た。わーい。

負けた数も私が頑張った数なのだから

 今年度成績はというと、この原稿を書いている時点で18勝17敗。

 この17敗という数字、私の女流棋士生活の中で恐らくダントツである。

 今年度はよく負けるなー、と思うのも当たり前の数字で、全女流棋士の中でも負け数はトップだ。ここまで来たら、年間最多負け数の歴代記録が気になってくる。

 負けるのは当然嬉しくはないが、たくさん負けられるというのは、たくさん対局をしていることとほぼイコールになる。

 女流棋戦で言えば、女流名人戦もしくは女流王位戦のリーグ入りをするか、タイトル戦に出場しなければ人よりも多く負けることは出来ないのだ。痛みのある数だが、負けた数も私が頑張った数なのだから、これはこれで認めてあげたい。

2021.03.11(木)
文=上田初美