もちろん男性アイドルにも国内外から「アイドル」への厳しい偏見が向けられていた。しかし男性アイドルと比べて強力なファンダムを保有できなかった当時のガールグループにとって、ミュージシャンとしての個性や能力を主張する機会を持つことはより困難なことだった。当然グループの寿命もはるかに短かった。つまりガールグループには、「アイドル」と「女性アーティスト」という二つの偏見と壁が向けられていたのである。
興味深いことにそのようなまなざしを覆したのは、ガールグループ自身の音楽だった。少女時代の「The Boys」、f(x)の「Electric Shock」、Brown Eyed Girlsの「Abracadabra」など、強烈なサウンドと挑戦的な歌詞の歌とラップ、果敢なファッションとダンス、メッセージ性の強いミュージックビデオは、それまでK-POPガールグループに固定されていたイメージを「カワイイ女性像」から「強い女性像」へと転換させた。J-POPアイドルとの差異も、そこでより明確になった。
すると、世界中の「女性ファン」たちが反応した。記憶に新しいが、日本においても2010年頃にはじまったいわゆる「第2次韓流ブーム」を主導したのは、女性アイドルの「カッコよさ」に熱狂した若い女性たちだった。ガールグループによるその動きは、アジア音楽に対して偏見を持っていた欧米の音楽業界とマスメディアにおいても、K-POP の存在感と影響力を高めた決定的な要因のひとつとして作用した。
2NE1の「I AM THE BEST」
そのなかでもとくに大きな「影響力」を発揮したのは、YGエンターテインメントの4人組グループ2NE1だった。代表曲「I AM THE BEST」のヒップホップベースの強烈なサウンドと「私こそ最高」と主張するその大胆な表現で、彼女たちは一気に「ガールクラッシュ」(女性を熱狂させる女性)の象徴として浮上した。マイクロソフトの「Surface Pro3」CMをはじめ、多くの国のマスメディアは、「現地化」されていない韓国語歌詞の「I AM THE BEST」を流した。
2021.02.20(土)
文=金 成玟