つまり2010年代前半の、2NE1をはじめとするK-POPガールグループの「ガールクラッシュ」は、時代が求める感覚とリンクするものだった。それは当時のさまざまな記録が物語っている。例えば、アメリカの代表的な音楽雑誌のひとつ『SPIN』は、「2011年のベスト・ポップ・アルバム20(SPIN’s 20 Best Pop Albums of 2011)」で、2NE1の『2nd Mini Album』を6位に、少女時代の『Girls’ Generation』を18位に上げた。1位はレディー・ガガの『Born This Way』だった。このような女性アーティストたちの影響力は、その後2010年代全体の音楽的・社会的変化と絡みながらより急速に拡大していった。

 

プロデューサーTeddyの存在

「アイドル」と「女性アーティスト」という偏見を乗り越えたBLACKPINKの影響力は、このようなローカル・グローバルな系譜のうえでより鮮明に見える。実際、その音楽の内側と外側はさまざまなかたちでつながっている。その代表的な存在は、YGエンターテインメントのメイン・プロデューサーTeddy(テディ・パク)。BLACKPINKは、彼女たちの全ヒット曲を手がけたTeddyの音楽を通じて、2NE1とつながっている。「I AM THE BEST」をはじめ、2NE1の多くの代表曲も彼の作品。

 Teddyは、1998年、4人組ヒップホップ・グループ「1TYM」のメンバーとして韓国でデビューしたアメリカ移民1.5世のミュージシャンである。90年代からヒップホップのサウンドやラップを主な表現様式として積極的に取り入れていくなかで、Teddyのように移民や留学を経験したミュージシャンたちの「アメリカ」をめぐる認識と感情は、K-POPの音楽的スタイルや感受性に大きな影響を与えた。

 そこには、アジア人に対する偏見や差別も含まれる。つまり、アメリカの音楽産業への単純な憧れではなく、同時代的かつリアルな「アメリカ」がつねに意識されてきたのである。「FANTASTIC BABY」「LOSER」「BANG BANG BANG」などを手がけ、「ヒップホップ」を掲げたグループBIGBANGを世界的な「アイドル」に育て上げたTeddyは、自ら「アジア人」と「アイドル」への偏見両方を経験し、乗り越えてきた人物でもある。

https://www.youtube.com/watch?v=wgwMzdNneyI 

 そういう意味で、レディー・ガガが2020年に発表した6枚目のアルバム『Chromatica』の収録曲「Sour Candy」は興味深い。BLACKPINKが韓国語の歌詞でレディー・ガガとコラボし、Teddyが共同プロデューサーとして参加したこの曲は、さまざまな偏見と向き合いながら音楽的・社会的影響力を拡大してきたアーティストたちの経験と感覚が時代を超えてどのようにつながっているのかを、「POP」そのものを通じて劇的に表しているようにみえるからだ。

2021.02.20(土)
文=金 成玟