「半分、青い。」ファンも納得の遊び心と創作論

 最後に「ウチカレ」をさらに楽しめるポイントを2つ紹介します。

 1つめは、遊び心のある小ネタの数々。朝ドラ「半分、青い。」では「ロングバケーション」の伝説のスーパーボールシーンが再現するなど、視聴者を盛り上げる多くの工夫がなされていましたが、今作もたくさんの小ネタが用意されています。

 たとえば第1話の碧のセリフ「ちょ待てよ。あ、キムタクになっちゃった」というキムタクいじり。これはかつて「ロングバケーション」や「Beautiful Life~ふたりでいた日々~」(00年・TBS系)でタッグを組んだ北川だからこそなせる、ドラマファン心をくすぐる技!

 ほかにも、碧は空に対し「君だってそのニットTOGAだよね? 永野芽郁が紅白で着てたTOGAだよね?」とぶっこみ。さらに碧の変わりに雑誌で連載を持つイケメン俳優の中川トモロウは、朝ドラ「かんかん照り」でブレイクしたという設定で、こちらは「半分、青い。」に出演した中村倫也の名前をもじっています(中川トモロウ役でリアルに本作にも出演してほしい!)。

 そのすべてのネタがうまく生きているのは、セリフのテンポがいいから。「半分、青い。」に出演していた風吹ジュンが以前インタビューで「泣きが入ったり、怒りが入ったり、北川(悦吏子)さんの本は譜面に書けないリズムのような面白さがあって、自由ですごく楽しいんです」と語っていました。

 このドラマもまさにそのリズムがうまく作用しているように思います。予定調和のない、慣れないテンポに違和感を覚える視聴者もいたようですが、これには中毒性があるんです。観ているうちに不思議とクセになり、どんどんハマってしまうんですよ!

 もう1つは、「創作論」。これは「半分、青い。」にも共通します。「半分、青い。」では主人公の鈴愛は漫画家を目指し、秋風先生(豊川悦司)のアシスタントになります。

 「いいか、半端に生きるな。創作物は人が試される。その人がどれだけ痛みと向き合ったか。憎しみと向き合ったか。喜びを喜びとして受け止めたか。逃げるな」

 「マンガにしてみろ。物語にしてみろ。楽になる。救われるぞ。創作は、物語を作ることは、自身を救うんだ。私はそう信じている。物語には人を癒やす力があるんだ」

 など、劇中で語られる秋風先生の語録には、胸を熱くした人も多いはず。これらはきっと脚本家である北川悦吏子の、創作に対する嘘のない思いのように感じます。今作では主人公は小説家、そして娘は第2話で漫画創作に興味を示す展開となっています。テーマのひとつとして、登場人物たちのものづくりに対する思いや、創作を通してのそれぞれの成長にも注目してみてはいかがでしょうか。母娘が恋よりも大切なものを見つけられるか、今後も楽しみです!

綿貫大介

編集者・ライター・TVウォッチャー。著書に『ボクたちのドラマシリーズ』がある。
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2021.01.28(木)
文=綿貫大介