千葉は昨年に「サンデー毎日」(2020年2月23日号)でインタビューした際、ライバルは誰かという質問に、ちょっと考えた後、「寺田心くん」と回答した。これは彼らしいサービス精神満点のジョークではあるが、その理由は本質を突いたものだった。
「ただ、誤解を恐れずに言うと、この仕事は水商売だと僕は思っているんです。『お客さんが日頃の仕事の鬱憤などを忘れて笑顔になってくれること』が、僕らの仕事で。そこで求められるのが『可愛さ』なら、できるだけ応えたいですから」
自分の容貌やキャラクター、周りが求めているものを瞬時に判断し、とびきりのサービス精神で打って返す。これが、彼がSNSなどで「千葉プロ」と呼ばれ、同世代俳優のなかで異彩を放っている所以なのだろう。
かつては俳優序列2番手、3番手だった千葉
しかし、今でこそ「あざとかわいい」「小悪魔」の代名詞のように言われる千葉雄大だが、かつては“若手イケメン俳優勢ぞろい系”作品の1人か、ヒロインとは決して結ばれない2番手、3番手のポジションでいることが長かった。
2010年に「天装戦隊ゴセイジャー」(テレビ朝日系)のゴセイレッド役で俳優デビューした後は、映画「桜蘭高校ホスト部」(2012年)ではカワイイ系ホストを、ドラマ&映画「黒崎くんの言いなりになんてならない」(日本ドラマ系・2015年、2016年)では優しく穏やかな性格から“白王子”と呼ばれる白河タクミ役を演じ、ドラマ&映画「兄に愛されすぎて困ってます」(2017年)では土屋太鳳演じるヒロインに失恋する大病院の息子役だった。
男性芸能人にモテまくるというポジション
そして、そんな役柄や清潔感ある綺麗な面立ちも手伝って、バラエティ番組に出たときには「男性芸能人がドキッとしてしまう男性芸能人」という扱いを受けることが多かった。
2016年に出演した「しゃべくり007」(日本テレビ系)では有田哲平から「千葉ちゃんがマジで、付き合ってくださいって真剣に言ってきたら俺はたぶん付き合うと思う」と言われたり、2015年には「着信御礼!ケータイ大喜利」(NHK)で千原ジュニアに「個室で1週間閉じ込められてたら俺イクで」と指さされたりすることもあった。
千葉にメロメロになっていたのは俳優仲間たちも同じだ。間宮祥太朗が2018年の「おしゃれイズム」(日本テレビ系)で「本当に可愛いですね!」と言ったり、綾野剛も2017年のラジオ「おぎやはぎのメガネびいき」で一緒に寿司を食べたときの反応が「たまんなくかわいいんすよ!」と千葉への愛を語っている。
今振り返ってみると「セクハラなのでは……」と思うような発言もあったが、千葉がそれを嫌がるような素振りを見せることはなく、少しはにかんだり、ニコニコと楽しそうに笑っていた。そのため当時の千葉は見た目通り、優しくて性格がいい男の子、という現実離れした印象だった。
2021.01.30(土)
文=田幸 和歌子