現在発売中のCREA2020年9・10月合併号では、千葉雄大さんのCREA初エッセイ「スマホはまだ捨てない」が掲載されています。
「エッセイを書いてみませんか?」――唐突かもしれない編集部からの依頼に、「書きたいです」と快諾してくださった千葉さん。
インタビュー当日の朝に届いた文章の中には、彼の言葉との葛藤と、他者に向けられた優しい眼差しとが綴られていて……。
CREA WEBでは、エッセイにまつわるインタビューの全貌と撮り下ろし写真を、大公開します!
書くことで 頭の中にあるモヤモヤが整理されていった
小学生の頃は、児童会選挙に立候補するような、活発な子どもだったという。それが、「中学に入ると、だんだん静かになっていった」。
最初に、エッセイを書いてみたいと思った動機について質問すると、千葉さんは、大きな瞳を宙に泳がせながら、子どもの頃の自分をゆっくりと振り返り、「でも、なんで静かになったんだろう?」と自問した。
「たぶん、声変わりした頃から、自分と他人のズレみたいなものを感じ始めたのかもしれないです。僕自身は、何も変わってないはずなのに、周りが勝手に変わってしまうような妙な居心地の悪さを覚えて……。それから、人に合わせることが多くなって、高校に入ってからは、人に合わせるのも面倒臭くなって、何もしなくなった」
学校が終わると、誰とも言葉を交わすことなく、まっすぐ家に帰る。そんな日々が続いた。
「文章を書く楽しさに目覚めたのは大学生の時です。当時流行っていたサイトに、僕もその日あったことを記録したり、好きな映画の感想を書いたりしていたんです。
でも、誰かに読まれる前提ではなく、単純に頭の中にあるモヤモヤを整理したい時は、チラシの裏なんかに、モヤモヤを書き出したりしていました。書くと、『あれ? これって違くないか』とか、自分を客観的に見られる。
だから、モヤモヤについては、書き出したら気が済んで、ポイッて捨てちゃう。捨てて解消! みたいな(笑)」
2020.08.06(木)
文=菊地陽子
撮影=桑島智輝
スタイリスト=寒河江 健
ヘアメイク=堤 紗也香