長引くコロナ禍で海外旅行への憧れが募る中、まるでシンガポールに観光したかのような気分を味わえる成田空港発の周遊フライトが、JALより発売されました。

 そのリアルな搭乗レポートを、トラベルジャーナリストのたかせ藍沙さんがお届け!


まずはバスツアーで一般人未踏のタワーへ!

 コロナ禍で国境を越えての旅行が自由にできない今、各国の航空会社は様々なアイデアで収益を上げる工夫をしている。駐機中の飛行機をレストランにして機内食を提供したり、空港内で模擬出入国審査を通って機内に乗り込む模擬海外旅行ツアー(飛行はしない)を催行したり、スーパーで機内食を販売したり。韓国の航空会社では、日本上空まで飛ぶ遊覧フライトも催行された。

 日本の航空会社も8月から数回、遊覧フライトを催行している。国際線仕様の大型機を使って日本上空をひと周りして出発した空港に戻ってくるという内容だ。応募者多数の場合は抽選になるが、どのフライトも人気が高く、100倍を超える倍率となったフライトも。

 そんな中、JALがシンガポール政府観光局、成田空港株式会社(NAA)とタッグを組んで企画したのが、「チャーターDE海外旅行気分を満喫! 〜シンガポール〜」だ。飛行時間は、それまでのチャーターフライトが1時間30分程度だったのに対し、3時間30分とたっぷり。機内では、機内食の提供をはじめ、いろいろなお楽しみが用意されているという。

 フライト前の午前中には、オプションのバスツアーも催行された。成田空港の制限区域内をバスで巡るツアーで、こちらの参加も抽選となった。実は、バスツアーのほうが抽選倍率は高く、希望者は定員の25倍もあったという。通常は入ることができないエリアだから、飛行機好きには貴重な体験だ。

 バスツアーからご紹介しよう。最初に向かったのは「ランプセントラルタワー」の研修室。旧管制塔内に併設されていた、ランプエリアのコントロール業務を担うタワーだ。2020年10月から運用が開始されたばかりで、関係者以外の一般客が中に入るのは初めてだという。

 高さ54.89メートルの中央運用室よりも10.89メートル低いが、それでも地上44メートルもの高さから360 度空港を見渡す景色はここでしか見ることができない。駐機中の飛行機やターミナルビル、ズラリと並ぶ燃料タンクなど、旅客の乗降、貨物などの積み下ろし、給油・整備などのためのランプ(エプロン)エリアのすべてを眺めることができる。

 次に向かったのはA滑走路近くの「消防西分遣所」。成田空港には、化学消防車6台を中核とした17台の消火救難車両で24時間、万全の消火救難体制が敷かれている。こちらには2台の消防車が配備されていた。空港内で火災が発生すると3分以内で現場に行くことができ、80メートルの放水が可能だという。エアバス社の総2階建てA380型機の全長が73メートルなので、機体全体をカバーできる。

 再びバスに乗り、貨物機の駐機スペースを通って国内線のチェックインカウンターへ。いよいよ搭乗だ。

2020.12.26(土)
文・撮影=たかせ藍沙