花を買って家に飾る、それだけでも十分に豊かな時間を過ごせるけど、花の楽しみ方はノールール。今まで知らなかった新しい花との付き合い方を、フラワーデザイナーの佐藤俊輔さんがお届け。もっと自由に花と触れ合って、プレイフルな日々を楽しもう。


日本とは違うニューヨークのクリスマス

 海外旅行や海開き、花火大会などのイベントがないまま夏が過ぎ去り、秋になり、本格的に冬の足音が聞こえ始めました。例年よりも季節を実感する機会が少ない今年だからこそ、年末のビッグイベント、クリスマスはおうち時間を使って上手に楽しみたいものです。

 世界には様々なクリスマスイベントがあります。ホットワインを片手に巡るドイツのクリスマスマーケット、真夏にサンタの恰好でサーフィンを楽しむオーストラリアのビーチ、フィンランドのサンタクロース村ではクリスマスにオーロラが見られることもあるそうです。

 そんな世界中で親しまれているクリスマスですが、やはり外せないのはニューヨークのクリスマスではないでしょうか?

 僕がはじめてニューヨークを訪れたのは、2011年。クリスマスを家族で祝うためにほぼすべてのお店が閉まったマンハッタンは、想像以上に心細いものでした。

 薄暗く寂しい5番街で、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーがひときわ美しく輝いていたのが印象的でした。

 映画『ホーム・アローン2』でクリスマスにひとりぼっちになってしまったマコーレ・カルキンが母親と再会を果たすのもこのツリーの前です。

 ちなみに、ニューヨーク州郊外のモミの木を切り出して作ることが多い、高さ20メートルを超える巨大な光のモニュメントはロックフェラーの財の象徴のように見えますが、はじまりは6メートルほどの小さなツリーだったことをご存じでしょうか?

 時は大恐慌時代にまでさかのぼります。1929年、ウォール街で株価が大暴落したことで、すでに摩天楼が登場していたマンハッタンでは、その建設計画がほぼ中止となり、新たなビルの建設もなくなったことで、建設労働者が大量に失業しました。

 ロックフェラーセンターの建設が始まったのは、その翌年の1930年。ロックフェラーは先行きの見えない経済の混乱の中、労働者を救済するためにロックフェラーセンター建設を断行。竣工までの9年間で約75,000人が働くことになりました。

 1931年のクリスマスイブの給料日、建設労働者たちは職があることに感謝を込めて、お金を出し合い6メートルの小さなクリスマスツリーを飾ったのが、ロックフェラーツリーの始まりなのです。

2020.12.05(土)
文=佐藤俊輔
写真=平松市聖