“コロナ後遺症”にも漢方薬は効く?
第3は「後遺症に対する漢方薬の有効性」である。この点について、金沢大学附属病院漢方医学科臨床教授で、漢方薬の免疫学的研究にも詳しい小川恵子医師は、次のようにその可能性を指摘している。
「新型コロナウイルス感染症の場合、たとえ軽症であったとしても、回復後になお倦怠感、咳、呼吸困難、不眠、不安感など、多彩な症状を訴えることが少なくないと言われています。
例えば、回復後に呼吸困難を訴える場合には、罹患後の慢性炎症に対する処方、すなわち小柴胡湯(しょうさいことう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが適するケースが多くあります。
同様に、喉の不快感や乾燥感が主体の場合には、麦門冬湯(ばくもんどうとう)や滋陰至宝湯(じいんしほうとう)などが適するケースが多い。
どのケースにおいても、処方は患者さんの病態や症状、さらには罹患からの期間などによって変わってきますが、逆に言えば、ここに保険適用分だけでも148もの処方が可能な漢方薬の強みがあるとも言えるのです」
エビデンスを構築するために
第4は「漢方薬の有効性を裏づけるエビデンスの構築」である。実は今、日本東洋医学会(一般社団法人)主導による、以下のような3つのスタディーが開始されている。
1:COVID-19患者への投薬実態調査
東北大学担当。軽症、中等症の感冒様症状を有するCOVID-19患者を対象に、治療内容、発熱、咳、痰、倦怠感、重症化などについて調査する
2:COVID-19患者への治療効果
東北大学担当。軽症、中等症の感冒様症状を有するCOVID-19患者を、コントロール群(対症療法。具体的には西洋薬などを使って行われているさまざまな治療方法)と漢方群(対症療法+漢方薬)に分け、それぞれ治療を行った上で、発熱、咳、痰、倦怠感、重症化などについて観察、比較する
3:健常者へのCOVID-19発症予防効果
千葉大学担当。COVID-19に未感染の医療関係者(無症状)を、試験薬(漢方薬)投与群と偽薬投与群に分け、それぞれ投与を行った上で、試験薬(漢方薬)の感染予防効果を確かめる
このうち1の投薬実態調査について、東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療共同研究講座特命教授で、投薬実態調査事務局の責任者を務める高山真医師は「現在、対新型コロナウイルス感染症治療薬として、さまざまな既存薬や新薬の治験が実施されていますが、エビデンスのある治療方法は限られた条件下での一部に留まっています」とした上で、調査の目的をこう話す。
2020.11.22(日)
文=森 省歩