テレビや床暖房がないほうが気分はリッチになれる

「ここにはテレビがありませんが、そのぶん本を読んだり会話をする時間が増えます。

暖房は薪ストーブ。軽井沢の冬は寒いですから、床暖房がなくて大丈夫だろうかとも思いましたが、炎の遠赤外線効果でじんわりとやさしい暖かさが心地いい。
もし床暖房があったらこの快適さが半減していたかもしれませんし、せっかくの薪ストーブをつけなくなっていたかもしれません」

もうひとつ、この家には天井に照明がほとんどついていない。
「ダウンライトはリビングに1個だけ。なくしてみると天井から煌煌と照らされるのは疲れるものだとわかりました。ペンダントライトやスタンド、そして薪ストーブの炎の灯りで十分。リラックスしてリッチな気分になれます」

「東京はアクティブに便利に暮らすための家、ここはこもるための家。家で過ごすことを考えたら、今はここが一番快適」とYさん。

利便性を追求した東京のマンションとは正反対のセカンドハウスで、当たり前だったことを引き算したら、新しい日常が生まれた。そこには経験したことのない心豊かな時間が流れている。
最近整理したもの「大量の服と靴」

夫は現役、妻ももともとアパレル関連の仕事で、大量の衣装持ちだったけれど。
「よけいなものを持たないのがこれからの目標。服も似合うものだけあればいいと、大量に処分し、厳選するようにしました」
山荘らしさを意識した玄関横のオープンなシューズクローゼットも、見えることで常にすっきり、ものが増えすぎない効果があるよう。
モリノイエ軽井沢[設計・施工]

今は旅よりここが心地いい
ステイしたくなる部屋
2020.10.28(水)
Text=Yoko Maenaka(BEAM)
Photographs=Hirotaka Hashimoto
CREA 2020年11・12月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。